都市夢ーとしむー
その2/奥の段



奥の段の間で眠りについていたリカが目覚めた。
リカの要する睡眠時間は通常、人間の世界ではおよそ20時間程度であったが、ここではほんの数分に過ぎない。

寝起きのリカは目が銀色に発光し、全身からは妖気が漲っていた。
リカにとっての睡眠は、人間の女を喰らうのと同様、重要なエネルギー源であったのだ。



...


立ち上がったリカは、壁一面に水鏡を呼び込むと、皮手袋をはめた両手に来光させた。
しばらくすると、銀と紫の水が流れ混じりながら、やがてジュリの姿が映しだされた。

「ジュリ…」

水鏡の向こう側に呼びかけると、ジュリはリカに気付いたようだ。

...


「リカ…」

「フフ…、アンタ、すっかり割り切れたようね。いいわ。今、胸の内で描いている通り行動しなさい。面白い流れができるかもしれないから」

「あなた、私の心が読めるのね?」

「感覚が透けて見えるのよ。特に若いに女の心の中は…。私の目利きに狂いはなかったみたいね。ジュリ、遠慮なしでいきなさい」

「わかった…。今、そっちの世界なんでしょ?」

「”ここ”は、いわば私の家よ。行こうと思えばすぐそこに移れるけど、今は起きたばかりだから、やめとくわ。…2日後、鏡の前で来光を試してみなさい。最初からは無理だと思うけど。その時、次の段階の話をする」

「うん、2日後、自宅の鏡でやってみる」

この後、ジュリの姿と共に壁の水鏡は蒸発するかのように立ち消えた。




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