都市夢ーとしむー
その3/邪悪への脱皮


ジュリは内心、不安と焦りを抱えていた。

自宅の洗面所でしきりに両手を鏡に掲げ、来光を試みるが、一向にその気配を掴めないのだ…。

”私はリカの僕(シモベ)となる覚悟を以って確約はした。でも、その証を手にすることって、果てしてこの自分にできるのだろうか…”

そんな思いが胸に去来する都度、彼女は自分にとっての”脱皮”が高いハードとなっている”根本要因”に面と向かったいた。
それは、ジュリとは言え、容易ならざる心の踏ん切りを要することだった…。


...


”要は人間を捨てる決断に行き着くのよ、これは…”

既にジュリには”それ”を悟っていたのだ。

”これから私が手に入れる能力は、おそらく人間の命を奪うことだって不可能じゃないだろう…。そうなれば、私はもはや人間の皮を被った別の存在になる…。正直言って恐いよ…”

これが今時点のジュリの偽らざる本心だったのだ。


...


そして、彼女にははっきりわかっていた。
その踏ん切りが確実にできない限り、”来光”には達せないであろうことを…。

しかし、その杞憂はこの類まれな悪女にとって、さほどのハードルではなかった。
それは、リカがいみじくも言った通り、ジュリにはその”素質”が備わっていた由縁なのだろう…。

間もなくジュリは、完璧には程遠いながらも、来光を手に入れることになる…。
それは、”あるコツ”をテコにすることによってもたらされたのだ。





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