都市夢ーとしむー
その2/人影



群馬県内入り、二人はPAでトイレ休憩をとることにした。

”さすがにウィークデーのこの時間だと車も少ないな…”

マリはトイレ正面の駐車スペースへと、手際よくバックで切り返しの作業に入っていた。
助手席のイズミはシートベルトを外しながら、ふとバックミラーに目をやった…。

「あっ、マリ、危ない!人がいるよ!」

「えっ?」

イズミの声でマリはバックの途中で急停車した。


...


「イズミ、人なんていないじゃん…」

イズミはシートベルトを外して、後部を振り返ったが、確かに今目にした人影はなかった。

”おかしい…。今のは明らかに女性だった。黒い服を着た若い感じの…”

「ごめん、錯覚だったみたい…」

「はは…、外国から戻ってばかりだし、疲れてんだよ。さあ、降りよう」

車外に降りて、イズミは車の後ろをもう一度見まわしてみた。

”いないか…。でも…”

イズミはバックミラーに映ったその女と、一瞬だが目線があったのだ。
それも、バックする車にぶつかる寸前の距離感だった…。

”なんか、ちょっと薄笑いを浮かべてたような顔だったけど、やはり気のせいかな。何しろ、長時間の長旅だったし時差ボケもあるか…”

イズミはひとまず、そこで自分を納得させることにした。






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