都市夢ーとしむー
その3/PAにて



「…じゃあ、アユムで3人目なの?」

「うん、半年くらいの間にね…。20代の女子社員ばかり、みんな急にだよ。もちろん偶然だとは思うけど、会社の上の人はちょっと気にしてるみたい。遺族も過労死とかの疑念を持ったりするだろうしね」

マリはPAのベンチに座ってタバコを咥えながら、イズミの話をふんふんと相槌を打ちながらも、どうやら聞き流しているようだった。

...


「…特にウチは今さ、女子社員の登用に力を入れてるところだから、変な噂が独り歩きすると優秀な人材が採用できなくなるって、人事が神経質になっててね(苦笑)」

「じゃあ、イズミはその女性戦力の先頭に立ってる訳か。何と言っても海外営業部門で2か国語ペラペラなら最強だもんね(笑)」

マリはタバコの煙を吐きながら、ケラケラ笑っていた。

「でも、このところ社内ではさ、業推企画が従来の営業を押しのけて海外の事業提携とかに乗りだしてるんだよね。…ああ、同期のジュリが今の推進企画のエースなんだ。彼女、プロジェクトチームを率いて凄い勢いだよ」

「ああ、あの性悪女ね。一回、何かの集まりでもろケンカになってさ。イズミ…、頑張って。あんなクソ女に負けないでよね」

ここで影山ジュリの名前が出て、マリは一転、イズミの話に熱く反応していた。

”そうだったわ…。顧客サービス管理室に所属してたマリ、ジュリとは水と油の仲で、みんなの前で取っ組み合い寸前の時もあったっけ…(苦笑)”

そんなことを思いだしながらも、イズミは自分の前の立ち塞がる最大のライバルが影山ジュリであることを、帰国早々、強く意識していた…。






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