都市夢ーとしむー
人間たちの攻防
その1/ヒソヒソ話
フランスパリから海外営業チームが帰国した日の午後…、Jリードレン株式会社、業務推進企画室…。
「室長、ちょっといいですか?」
企画室長の金熊は、係長クラスの安達統括補佐とミーティング・ボックスに入った。
安達は金熊の子飼いで、室内では室長の腰巾着的存在だった。
どうやら、本日のヒソヒソ話が始まるようだ…。
...
「…営業部のパリ部隊、帰国しましたよ。ルルーヌ社との折衝はうまくいったようです。近く役員会で事業提携が諮られるみたいですね。そうなると、ウチのカナダ戦略はつぶされかねませんが…。どうします?」
「安達くん、そう慌てることはないさ。こっちの対カナダプロジェクトは、影山の発案を副島常務の肝いりで進めたものだ。業推企画としても力を入れない訳に行かなかったから、私も積極的に先頭で指揮を執ったがね…。はっきり言ってヘンネル社との共同プロジェクトには、何が何でもって気持ちはない…。言ってる意味、分かるだろう?」
安達は決して反応が早い方ではなかった。
...
「はあ…。じゃあ、営業部に海外提携先は持っていかれても構わないんですか?」
「あのな…、この海外提携先の攻防は、次期副社長ポストをめぐる役員間の駆け引きにされてるよ。冷静に見ないとダメだって。副島常務は何しろ強引な面がな…。もし失脚と言う場合は、今の営業部との対立は解消するやも知れん。ならばだ…、へンネルは当面の推移を見て柔軟にいこうや」
「では、とりあえず、ルルーヌの役員会決議次第ですね」
「そう言うことだ」
ここで二人はミーティングルームを出た。
すると、女子社員が金熊に声をかけてきた。
「室長、副島常務がお呼びですよ」
金熊は、30センチは目の位置が違う腰ぎんちゃくとアイコンタクトを交わしていたあと、一言答えた。
「わかった…」
その1/ヒソヒソ話
フランスパリから海外営業チームが帰国した日の午後…、Jリードレン株式会社、業務推進企画室…。
「室長、ちょっといいですか?」
企画室長の金熊は、係長クラスの安達統括補佐とミーティング・ボックスに入った。
安達は金熊の子飼いで、室内では室長の腰巾着的存在だった。
どうやら、本日のヒソヒソ話が始まるようだ…。
...
「…営業部のパリ部隊、帰国しましたよ。ルルーヌ社との折衝はうまくいったようです。近く役員会で事業提携が諮られるみたいですね。そうなると、ウチのカナダ戦略はつぶされかねませんが…。どうします?」
「安達くん、そう慌てることはないさ。こっちの対カナダプロジェクトは、影山の発案を副島常務の肝いりで進めたものだ。業推企画としても力を入れない訳に行かなかったから、私も積極的に先頭で指揮を執ったがね…。はっきり言ってヘンネル社との共同プロジェクトには、何が何でもって気持ちはない…。言ってる意味、分かるだろう?」
安達は決して反応が早い方ではなかった。
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「はあ…。じゃあ、営業部に海外提携先は持っていかれても構わないんですか?」
「あのな…、この海外提携先の攻防は、次期副社長ポストをめぐる役員間の駆け引きにされてるよ。冷静に見ないとダメだって。副島常務は何しろ強引な面がな…。もし失脚と言う場合は、今の営業部との対立は解消するやも知れん。ならばだ…、へンネルは当面の推移を見て柔軟にいこうや」
「では、とりあえず、ルルーヌの役員会決議次第ですね」
「そう言うことだ」
ここで二人はミーティングルームを出た。
すると、女子社員が金熊に声をかけてきた。
「室長、副島常務がお呼びですよ」
金熊は、30センチは目の位置が違う腰ぎんちゃくとアイコンタクトを交わしていたあと、一言答えた。
「わかった…」