都市夢ーとしむー
その3/修正軌道


「君は長く、全身全霊をもって我が社の発展に貢献してくれた功労者だ。その君が対営業部で勝算なしと見とってるんだ。ここは、他の者に当たらせよう。ダメもとでな。将来の経験のために、若い人材、それも女性を投入して。…そうだな、やはりクライアント対象がヘンネル社なんだから英語力に長けていて、かつセールスセンスのある子じゃないと。さて‥、誰が適任だろうか…。なあ、金熊君‥」

”しまった…!”

これが金熊の脳裏に飛びこんだ第一声だった


...


「やはり…、影山ジュリかと…」

「そうか…。では、彼女にヘンネル社戦略の引継ぎを頼む。そうだな…、対ヘンネルとなれば、その布陣は思い切って若手中心の少数精鋭ってことでどうだ?」

「ええ…、私もそれが妥当かと…」

金熊は、体育会系出身の営業畑叩き上げとは思えないほど、精気のない声で上司に答えた。

「うむ…。君もそういう見解なら、ここは海外営業部隊へのけん制も込めて大胆に常識破りの人事をぶち上げよう」

「えっ‥?はあ‥?」


...


「承知いたしました、常務!この人事上申のタイミングは常務にお任せしますので、業推としては、いける前提で部内をまとめますが、よろしいですね?」

ここで金熊は十八番である、目上からの言質取りに出た。
もちろん、今さっきとは別人のような超ハイテンションで…。

「ハハハ…、無論さ。金熊君、キミは実に頼もしい。役員連中のクロージングは私に任せればいい。やってやろうじゃないか、今回もな。時代遅れの営業部隊に目にものを見せてやろう。その為にも、影山だ。彼女を清田イズミにぶつけて、私たちのステージアップを実現しようではないか」

「はいー、常務…。それで早速午後、部内のミーティングを持ちますんで…。いいですね、即かかりますが…」

「ああ、即行動でいい。期待してるよ、金熊室長…」

金熊はこの言葉を耳に収めたあと、2秒で常務室を出た…。






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