都市夢ーとしむー
その7/脚光を浴びる女



一方、2階の営業部では、パリから凱旋した海外派遣スタッフによる、成果報告のミーティンが続いていた。

ここでの中心はなんといっても、清田イズミだった。
ルルーヌとJリードレンの事業提携基本同意を主導した立役者として、彼女は帰国後すでに、営業部の全員から脚光を浴びていたのだ。

...


”すごいわね…、清田さん…。ルルーヌの役員級とはすべて通訳無しで彼女が折衝したらしいし…”

”こうなると、今回のルルーヌ提携の功績で昇進は間違いないね”

”ああ、おそらく今度の役員会でルルーヌが正式承認されれば、その場で彼女の昇進事案も出るんじゃないか?”

”じゃあ、今の課長補佐ポストの上となると、課長かしらね。女性の課長職は推進企画の影山さんしかいなかったけど、清田さん、同期の女性課長第1号に追いつくわけね”

”営業部としても鼻が高いや。推進企画の連中、いつも影山ジュリのことを鼻にかけていやがったからな。でもよう…、清田はひょっとすると2階級特進の飛び級ってこともあるんじゃないのか?”

...


”えー!それって、次長補佐ってポストでしょう?いくら何でも20代の若い女性社員をそこまでの役職に就けるかな…”

”わからないわよ。第一、業推企画の影山さんがお気に入りの江副常務は、その次長補佐に早晩彼女をって意向とか…。そんな噂もあるわ”

”まあ、こっちがルルーヌと本格交渉してる最中に、ほぼ同じコンセプトをパクってさ、カナダのヘンネルとの共同事業推進をぶちあげたのだって、影山だろう。あいつは、金熊室長の頭越しで常務に猫だね声だしてさ、推進プロジェクトを上申したそうだしな”

”それ、あからさまに清田さんへの対抗心でしょ。嫌だわ!でも、いい気味よ。海外企業との提携先は清田さんの活躍で我が営業が勝ちとったんだもの。そうよね、この際、飛び級でもなんでもいいから、影山の性悪女を抜いて欲しいわ!”

営業部内は、ルルーヌとの事業提携に関する内容よりも、清田イズミの昇格人事と影山ジュリとのライバル関係に興味が奪われていた…。





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