都市夢ーとしむー
その2/邪なる誘い


「私はアンタが大事なのよ。ううん…、私にはアオイ以外はいらないとさえ思ってる」

「ジュリ…、先輩」

アオイの左手はすでに頬から離れていた。

「…今は全部を言えない。でも、これからの私は危険極まりない生き方になる。これはもう決めたことだから…。あとはアオイが私と一緒に歩むか否かだわ」

「…」

...


「このJリードレンでは、女でものし上げれる。私は行きつくところまで行ってみたいのよ。私のやり方で。…まず当面はイズミを潰す。これに変更はない。その為には卑劣な手段も厭わないわ。…でもさ、あなたに無理は言えない。その場合は私だけでやるわ」

アオイはかみ砕くように憧憬する先輩の言葉をじっと聞き入っていた…。
そして、やや間をおくと、きりっとした口調で答えるのだった。

「正直…、私なんか、先輩みたいにはできないと思う。きっと、ずっと迷って躊躇って、終わったら後悔して…。それが恐いんです。でも、その後の答えをジュリさんが用意してくれるんであれば…。私は着いていきます。先輩とは全部ひっくるめて一緒したいんです!」

この時…、ジュリの両手に激痛が走った。
そう、”あの痛み”だった…。

...


「ううっ‥、うっ…」

ジュリは思わず両手を握りつぶし、その場でしゃがみこんでしまった。

「どうしたんですか!先輩、大丈夫…?」

アオイは、咄嗟に自らもトイレの床にしゃがみこんでいた。
そして、気が付くとジュリを抱きこむように、両手で愛する先輩の肩をさすっていた。

すると、ジュリは自分の両手を握りあわせながら、体全体を正面のアオイに預け、膝はトイレの床についていた。
静かに涙を流しながら…。





< 50 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop