都市夢ーとしむー
その3/決心


その手の中にジュリを抱きこんでいたアオイは決心した。

”たとえこの人が罪深い行為に及ぼうが、私は一緒にいたい…。その後で後悔するんなら仕方ない”

アオイの決断へのプロセスは極めてシンプルだった。
そのあと、二人は1分近くこの態勢のままでいた。

その間、女子トイレには二人が入れ替わり入ってきたが、ジュリとアオイの姿をみて引き返していった。

アオイが決心に至ったこの短い時間は、二人にとって儀式と言えた…。

...


ジュリと共に前に進む覚悟を新たにしたアオイは、即、人選を済ませた。
要するに、内心では決まっていたのだ。

その役目を命じる男は…。
郡司ヒサト…、入社2年目の後輩だった。

...


”アオイが決してくれた。嬉しい…。ありがとう…”

あの後…。
アオイの体から離れると、両の手の甲から痛みは消えていた。
しかし、緑色の閃光は放たれていたままだったのだ。

それは、ドクドクと脈を打つかのように…。
左右ともきれいに3本のラインからは、緑の光が静かに発し、それはトイレを出てからも数分続いた。

いや、正確には徐々に光が弱くなり、完全に閃光が消えると、左右の手の甲からは3本のラインも消えてなくなっていた。
いわゆるフェイドアウトだった。

”これが来光なの…?私、それに達したの…?”

デスクに戻ってからも、しばらくジュリは心の中でそう自問自答していた。







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