都市夢ーとしむー

その６/狙われた女


ミカはすっかり好みが出来上がっていた。
ご馳走は理屈抜きに自分が気に入ったモノ…。

４００年を漂い、現代日本の大都会に”棲息”する”空間”を得た女魔人…。
彼女はもう、その嗜好を放棄する気などさらさらなかった。
まさに大都会は、偏食家を育む泉だったと帰結せざるを得ない。

それは…。
この時代を漠然と生きる人間でだけでなく、カラスやネズミやゴキちゃんとか、こっちの世界じゃないとこから来た人間らしき妖しい女とか…。

...


”どうしてこう、ご馳走なの…、あの巣は…。嬉しいわ。…あの女、ジュリに反応すると、どんどん熟成するじゃないのよ。私のエサは人間同士で刺激を与えれば、栄養価が増す訳ね。じゃあ、いじればいいんじゃない。なんでそんな単純なこと、見過ごしてたのかしら。そうよ、私の生の持続は狩りではなく、畜養と調理なのよね。うふふ…”

”その為には、もっと長い時間、人間たちの中に紛れ込めないと…。だから、今よりもっともっと栄養が必要になる。それじゃあ、キリないから、人間に私のやりたいことやらせりゃあいいのよ。ハハハ…、要はシモベちゃんってことね。正解だわ、私の気まぐれ…”

我々の生きる”この世界”は、実に厄介は理屈を招かざるイイ女に授けてしまったのだろうか…。
だが…、”このこと”を、ほぼ正確に知り得ている人間が、この時代にもたった一人だけいた…。

そして当の招かざるイイ女、ミカもそれが何者であるかを知っていた。
はるか遠くの昔から…。

それは”暗者”…、最後の一人…。