都市夢ーとしむー
その3/寝取った女


日曜日の夕方6時…。
影山ジュリは6階の総務課に時間通りやってきた。


...


「ジュリ、悪いわね。休みのところ」

「ううん、今日は暇だったし。でも、あなたも大変ね。退職ですって?」

「うん。健康上の問題でね。それで、残務がいろいろとね。決算期を前にしてて、あなたの部署の交通費ね、請求額が申告内容通りだと、金額が大幅に差異を生じてたの。気づいた時に確かめなきゃならなかったんだけど、古い話でごめんなさいね」

「いいのよ。ただ、かなり前のことだし、正確には覚えてないと思うけど…」

”まったく…、こんなことで呼び出して…。駅なんか適当につじつま合わせてくれりゃあいいんだよ!”

ジュリは口では愛想よく答えていたが、内心ではアユムに対しての不快な気分で溢れかえっていた。


...


「じゃあ、今回はそう言うことで処理しとくけど…。今後は気を付けた方がいいわ。今の部長、推進企画の経費が営業部を上回っちゃってるって、目をつけてるから」

「わかったわ。…でもねえ、今の時代、単なる営業なんかより私たちの部署の方がお金使うのよ。まあ、総務畑のあなたに言ってもさっぱりでしょうけど…」

ジュリはこの手の嫌味など日常茶飯事で、社内でも有名だった…。

「ああ、そんなことを以前、志田君も言ってたかな」

アユムはここで慎也の名前を出した。


...



「あっ、そうか…。志田君と付合ってたんだよね、アユム。確か結婚するとかしないとかって話まで出てたけどね…」

ジュリはアユムをあえて挑発するかのような口ぶりだった。

”白々しい…。なら、今問いただしてやる!”

アユムは決心し、パソコンのスイッチを切った。
そして、ジュリのきつい目と視線を合わせた…。





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