都市夢ーとしむー
その6/深まる不審の念


二人は獣のように互いの体を貪りあった。
おそらく…、コト最中でもイズミと慎也の頭の中には、アユムの顔が浮かんだだろうし、ジュリの存在が割り込んできただろう。

だが、この二人は様々なものに苦悩し、葛藤しながらも、互いを愛する気持ちを正直にぶつかっていた。

...


二人は汗まみれの体のまま、ベッドの中から出ることはなかった。
しかし…、イズミ、慎也共に、このまま眠る気もなかった。

”眠い…。できれば、このまま彼と一緒に裸のまま今日を終わりたいよ。でもダメ。ジュリのことはどうしても、慎也と話をしないと…”

「…そうか。イズミ…、推進企画のヘンネル戦略はPTはガセじゃないよ。おそらく、こっちのルルーヌ提携が役員会で承認された時に諮られ、それも承認だろう。その彼の配属もさ、もう決定されてるよ」

「じゃあ、彼の言ってることって、ウソや推測じゃあないのね…」

「でも、全部ってのはどうなんだろうか。まず、イズミを潰すだとかってのは、まあ、彼女ことだ。あり得るだろうけど、なんで、そのミッションを受けた者がいきなりチクるかなあってのがな…。不自然だよ、やっぱ…」

”不自然”…、それは夕方、郡司ヒサトと30分ほどあって話したイズミ自身もが、強く感じたトータルな印象であった。

...


「次に…、アユムが転落ってのだけど…。ふう…、これはお前が一番よく知ってることだろうけど、高崎の実家で遺族に会って、外傷なく死因も急性心不全ってことなんだろう?少なくとも、会社のビルから転落はないよ」

”まあ、慎也が言うこと、そりゃあ当然なんだけど…”

彼女のその思いは慎也も同様だった。

...


「…でもさあ、あくまで噂なんだが、彼女が亡くなる前日の午後、会社に出たらしいってのは事実みたいだ。同時間帯には影山ジュリもいて、二人が何やら話している姿が監視カメラに映ってたってんだ…」

「つまり、郡司ヒサシもあの日曜日に会社に出てたとしたら、アユムとジュリの二人が一緒にいたのを見かけた。そこまでの信憑性は低くないのかな…」

「うん…。だがよう‥、客観的に見て、Jリードレンの周辺って不可思議な現象、結構ないか?今回のアユムで3人目だろう、たかが1年もしないうちに…。若い20代のOLがみんな突然死だ。しかも、断定はできないが、他にも彼女らには共通点があるらしいってのもな…。そこでだ、現実的な常識をぼーんと外しちゃえばこうもなるだろ?」

「何よ、それ…」

この時のイズミは、なぜかゾクッと、言いようのない寒気さに襲われていた…。





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