都市夢ーとしむー
その9/強制契約



「いいか、イズミ…。”その先”に行ったら、すぐオレに伝えろ!真昼間からボーっとして、変な夢見るようになったら。そんで、白いバスとか…」

「やめて!…ああ、ゴメン。…でも、私怖いよ。これからの私、どうなって行くのか‥」

「…アユムには、オレ自身にも後ろめたさがあったからさ、勇気を出せなくて彼女の悩みに寄り添ってやれなかったんだ。そんなの、もうゴメンさ。イズミには、なりふり構わず、寄り添う。だから…」

「慎也…!ありがとう…。私、嬉しい‥」

二人はその夜、得体のしれない”何か”からの不安と恐怖に、二人力を合わせて挑むことを誓った…。

しかし…。
清田イズミがあの白日夢を目にするのは、この夜からわずか数日後となる…。


...


『ははーん…、リカよう…、そこまで手を突っ込んでいいのかいな?昔、”その感覚”を取り入れたばかりは、”あっち”のまわりをふわふわ浮いてるだけでいいとかって言ってなかったか-?』

「いつのこと言ってんのよ、起<オキ>…。骨と皮だけになっちゃって、今さっき口にしたことさえ速攻で忘れてんのに。”あっち”の時間幅で400年も前のカビの生えた私の言葉、必死に覚えてなくていいいって」

『いやいや…、初心忘れべからざるなだ…。これは、人間でもミミズでもコケでも、常に自己へ問い続けていかなきゃならん。ふう‥、こんな教鞭垂れさせるな。息が切れるわい。いいか、リカ…。所詮、見かけだけなんだからのう、今の人間の姿は…。せめて、中身くらいはシャキッとせいよ。今、お前が夢中になってるあんな汚れた時代の人間になど、そう熱くなるな…。人間の諸事情におせっかいはやぼだ。そう…、そこをいじってはな…、やぼじゃ…』

オキはこの後、ふっと消えた。
いつも通りに…。


...


”相変わらず、杓子定規な能書きで説教だよ。いつ消滅するんだっての、骨と皮だけの大将はよう…”

”へへ…、それに、もうやっちゃったっての。相手無視で強制的に契約締結さ。あの女はもういただくんだよ!”

女魔人リカ…。
孤独との戦いは400年にも及び、さしもの”彼女”とはいえ、深なる自問自答では”相手”が必要だったのだ…。








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