都市夢ーとしむー

第五章/定めし謀

シモベ、開眼す
その1/突破口あり



そして、眠りにつく前、イズミは”そこ”に気づいたのだった。

「…そうか!それこそ不自然極まりないか。イズミ…、これはぶ厚い壁をこじ開けられる突破口になるかもしれないぜ!」

「うん…。なぜ、”そこ”を見逃してたんだろう…。ただ漠然と不自然に感じていただけで、注視が足りなかったわ」

「いやあ…、フランスから凱旋帰国を果たして、出社初日で眠りにつく前なんて、凄いって!よく気づいたよ、イズミ」

「慎也…」

ベッドの中の二人は、横向きで強く抱きあっていた…。


...


数分前…、ベッド内の二人によって交わされた会話は、まさにこれから二人が直面するであろう事態への突破口となり得る、重要な”発見”だった。

そのキーポイントは、今夕、ウィルランドビルで業推企画室の郡司ヒサトが何気なく口にしたあの言葉だった。

そう…。
あの時、彼は確かに言った。

”…とにかく、一応、伝えましたんで。役目は済ませたことになるし…”と…。

...


「間違いないんだな、イズミ…。ヤツは確かに、”…役目を済ませた”、と…、そう言ったんだよな?」

「うん、ここは絶対聞き間違いない」

「そうなら、これって、影山ジュリが自ら画策したワナを仕掛けることを、故意に”敵”であるイズミへ暴露させたことになる…。これは一体何を意味するのか…」

「まず考えられるのは、郡司君が思わずポロリと漏らしちゃったってことね。であれば、端的にオウンゴールで終わるけど。でも、問題は不自然さよ。だから、オウンゴールの可能性は少ないと思う。だとすると…」

「イズミ…、どうやらオレと同じこと考えてるかもな」

「ええ…。慎也、言ってみて」

深夜1時半過ぎ…。
二人は自らに、まだ眠ることを許さなかった…。






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