都市夢ーとしむー
その2/おぞましき気配


「まず、今日の郡司は暗示というか、マインドコントロールっていうか、影山なりの言うがままの状態だったんじゃないかな。何も考えずに、強要された”セリフ”をしゃべるだけだったとね」

「…仮にそうだとして、”言わせた”のはジュリ以外もありって思ってるのね…、慎也は」

「そうだな。なにやら、超常現象みたいなものも事実、全くは無視できないし…。はっきり言って、黒いスーツを纏った若い女が影山の周辺で蠢いてると想定すべきだと思う。オレは…」

「うん…、それを前提にして、どうなのかしら。私に対してのあんな言い回しを彼に指示したということ…、その目的って…」

「よくわからないが、単純に考えれば、年下の業推の男をイズミに近づける目的ってね。”あっち”としては、男女間の関係までは無理にしても、イズミと郡司の間で”共通の敵”を共有する中に居てれば、ヤツを捨て駒に据えて、清田イズミを落としいれる使途はいくらでも考えられるだろう?」

「慎也…」

...


イズミの脳裏には、様々なシュチエーションが巡った。

”確かにいろんなパターンがあり得る。究極的には私を殺すとか…、逆に私が…。ああ、そんなことまで想像しちゃダメだ。ふう…、とにかく今は、然るべき人物らは、郡司ヒサトを私を貶める使者として利用する腹だと捉えてないと…”

この結論付けで、イズミはこの一連の流れが現実を見た時、自分がその中心にいることを実感せざるを得なかった…。

...


「ならさ、郡司をリトマス試験紙にすればいい。ヤツと接触すれば、然るべき連中のほころびも垣間見れるかもしれない」

「危険よ、そんなこと!…私、この際ジュリと会ってはっきりさせるわ!」

「イズミ…」

昔的な表現なら、時計の針は深夜2時…。
丑三つ時を迎えてのなか、二人はアクティブ極まりない現実と掴みどころのない超常現象からみの諸々に、それぞれ対峙していた…。




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