都市夢ーとしむー
その3/恋人たちの覚悟
「まあ…、そう熱くなるなよ、イズミ。ここで彼女に食ってかかったら、いいように持っていかれるよ。けしかけてる向こうはさ、いわば確信犯だよ」
「うん…、でも、だからこそ、中途半端な駆け引きなんて意味ないと思うのよ。ここは、ガツンとお互いが正面から…」
「いずみ…、今それに出るのは逆効果だって。とにかく、彼女を甘く見ない方がいいよ」
慎也は優しい口調ながら、イズミの言葉を遮った。
それこそ、正面から。
”こういうところ…、説き落とすじゃなく、ねじ伏せるなんじゃないかな…。以前から感じてたとこだけど、アユムと結婚ゴール直前に壁を超えられなかったのって、慎也のこういうところとかも一因だったりして…”
欧州からの凱旋を果たして疲労困憊のイズミではあったが、相手の言動に対してを捉える鋭敏さは、萎えることをに自らに許容できないかった。
それは無意識で…。
その一種悲しい習性によって、恋人への”長短”の秤目も、非情かつに敏感なものを備えていたのかもしれない…。
...
”とにかく、今は彼と歩調を合わせなきゃ。慎也だって、すべて私を思うが故だろうし…”
「じゃあ、わかった。郡司君と会う段取りはとる。でさ…、具体的に決めちゃおうよ。そのあと、私たちはどう出て行くのかを…」
「うん。なにしろ、彼とはその件でもう一度会おうとね…。もう少し、話を言聞きたいと。その場合、こっちからも伝えたいことがあると言えば、仮にバックのチェックが入っていても、返って向こうは乗ってくる材料になるさ。…うん、今度は会社からなるべく離れたところがいいな」
まさに慎也は矢継ぎ早に具体的とだった…。
イズミはそんな彼の”長所”に、改めてホロリときて、先ほどの鼻に付いた短所はどこかへ消え去った…。
...
「なんなら、このオレも一緒に彼と話すか…」
「ううん、今はまだ彼と接触しない方がいい気がする。なんとなくだけど。なにしろ今度は私一人で、できるところまでやってみるわ。そのあとでまた、二人でよく考えようよ。ねえ、慎也…」
「わかった。なら、このオレは、目の届くところに付いてるよ。もし、その場で何かあれば、すぐ駆けつける」
「ありがとう…」
このあと、二人は再び唇を重ねて愛しい相手との今この時を確認し、間もなく眠りについた…。
だが皮肉にも、この安らかな眠りという何気ない日常が、イズミに訪れることは、実質、この夜が最後だった…。
しっかり抱きあいながら、穏やかな深い寝息を二人が交差させる様‥。
一見微笑ましいその後継は、わずかにでも角度を変えると、覚悟を共にした、悲壮な恋人たちに映った…。
「まあ…、そう熱くなるなよ、イズミ。ここで彼女に食ってかかったら、いいように持っていかれるよ。けしかけてる向こうはさ、いわば確信犯だよ」
「うん…、でも、だからこそ、中途半端な駆け引きなんて意味ないと思うのよ。ここは、ガツンとお互いが正面から…」
「いずみ…、今それに出るのは逆効果だって。とにかく、彼女を甘く見ない方がいいよ」
慎也は優しい口調ながら、イズミの言葉を遮った。
それこそ、正面から。
”こういうところ…、説き落とすじゃなく、ねじ伏せるなんじゃないかな…。以前から感じてたとこだけど、アユムと結婚ゴール直前に壁を超えられなかったのって、慎也のこういうところとかも一因だったりして…”
欧州からの凱旋を果たして疲労困憊のイズミではあったが、相手の言動に対してを捉える鋭敏さは、萎えることをに自らに許容できないかった。
それは無意識で…。
その一種悲しい習性によって、恋人への”長短”の秤目も、非情かつに敏感なものを備えていたのかもしれない…。
...
”とにかく、今は彼と歩調を合わせなきゃ。慎也だって、すべて私を思うが故だろうし…”
「じゃあ、わかった。郡司君と会う段取りはとる。でさ…、具体的に決めちゃおうよ。そのあと、私たちはどう出て行くのかを…」
「うん。なにしろ、彼とはその件でもう一度会おうとね…。もう少し、話を言聞きたいと。その場合、こっちからも伝えたいことがあると言えば、仮にバックのチェックが入っていても、返って向こうは乗ってくる材料になるさ。…うん、今度は会社からなるべく離れたところがいいな」
まさに慎也は矢継ぎ早に具体的とだった…。
イズミはそんな彼の”長所”に、改めてホロリときて、先ほどの鼻に付いた短所はどこかへ消え去った…。
...
「なんなら、このオレも一緒に彼と話すか…」
「ううん、今はまだ彼と接触しない方がいい気がする。なんとなくだけど。なにしろ今度は私一人で、できるところまでやってみるわ。そのあとでまた、二人でよく考えようよ。ねえ、慎也…」
「わかった。なら、このオレは、目の届くところに付いてるよ。もし、その場で何かあれば、すぐ駆けつける」
「ありがとう…」
このあと、二人は再び唇を重ねて愛しい相手との今この時を確認し、間もなく眠りについた…。
だが皮肉にも、この安らかな眠りという何気ない日常が、イズミに訪れることは、実質、この夜が最後だった…。
しっかり抱きあいながら、穏やかな深い寝息を二人が交差させる様‥。
一見微笑ましいその後継は、わずかにでも角度を変えると、覚悟を共にした、悲壮な恋人たちに映った…。