都市夢ーとしむー
その6/沸点



6階の書庫室にカギをかけ、二人は声を潜めて話し合っていた…。

「…どうやら、アユムのそれと同じ感じではあるが、何しろ、今朝はバスまで見てないんだよな?」

「うん…、バス停も。それこそ、角を曲がって目に入る寸前で夢が覚めた。その時の意識では間違いなく”そこ”がバス停だと言う確信があったわ。。だから、次にあの夢が来たら、私…、絶対バス停に行っちゃう。そこには例の黒い服の女もいるそれで…、バスに乗る時が、もしかしたら…」

「イズミ、ここは冷静になろう。とにかく、今の時点ではまだ”到達”しいてない。まだ打つ手があるはずだ」

「慎也、でも時間がない…。私、そんな気がするの。どうしたらいいの、ねえ…」

さすがにイズミは焦る気持ちを抑えることができない。
だが、慎也が表面的にでも落ち着いているのが、彼女にはとても心強かった。

...


「まずは、郡司と会って話をするんだ。聞けるだけ聞いて、もし、影山ジュリとその黒いスーツ着た女の接点らしきものが見いだせれば、影山に問いただそう」

「じゃあ、早速連絡取って見るわ。慎也もそばにいてくれるんだよね?」

「ああ、もしその場で何かが起こればすぐに出張る」

慎也は毅然とそう言い切っていた。
そして、郡司ヒサシとはその日の昼に近くの公園で会うことになった…。

...


”まさに毎日、違う自分になっていくようだわ。というか、今までの自分をどんどん捨ててるような…。それって、もしかしたら人間で生きてきた私の余分なところを消し去っているのかも…。正直、恐い…。でも一方で、私の中で沸々と煮えたぎるのを止めることができない自分もいる”

”何かが漲ってくる感じ…。それに、どうしようもなく魅せられていくようだ。ふん…、そうよ、もう私は引き返せないのよ。それなら、今までの人間、影山ジュリを捨てるわ!”

オフィスの女子トイレ…、一番奥の個室では、影山ジュリが両の手の甲を目の前にかざしながらこ、不気味にこぼれ笑いを漏らしていた…。

”彼女”は今、確かな予期を感じていた。
”沸点”はもうすぐだと…。






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