都市夢ーとしむー
その2/捨て駒の男


「だけど、ジュリ…。カン違いはしないで。ヤレるのにやらない場合は私の要求に背いたことになるのよ。その場合はアンタ、お払い箱になる。即、立ちんぼの丘へ連行すわ。…いい?、これは来光を成就させらにも拘らず、”余分なモン”で挙行を制御するという愚かな判断を言ってる。わかるわね?」

「わかるわ…」

ジュリは十分に承知していた。
来光によりヤレる能力を手にしながら、ためらう気持ちに負けてしまう…、つまりできることを自ら放棄してしまう…。
そこに及べば、シモベ失格だということを…。

しかし、そのことを分かり切っていながら、ジュリは不安が拭い切れていなかった。

”この世を生きる人間特有の”余分なモン”…、それをもう捨てきってるのだろうか、私は…”

「アンタが私に誓ったシモベとなる覚悟がホンモノだったら、何も問題なしでしょ。人間の気持ちを捨て去った今のジュリなら、ぶっ殺すことは簡単にできる。それが出来なきゃ、やらなかったことになるんだかね。できるわね!」

「やる…、やってやるわよ!」

リカはジュリの心を見透かしていたようだった。

...

「何しろ、放波は意志との連動よ。単体施術なら波動の弱さはほとんど関係ない。…まだムリなのは、そのほかのことになる。包括施術ね。それは私が処置するから安心しなさい」

「ええ…」

「フフ…、幸いあの捨て駒、格好の波道を持ってるようだし。アンタの不完全な放波もしっかり効いてるじゃない、すでに(薄笑)。まあ、こっちはアンタ一人でもできるわ」

「じゃあ、もう一人はムリってことね?」

「マインドを自由にできるかどうか…、要はそこよ。恋人への気持ちが強いから、捨て駒の男通りにはいかないかな」

ここでも、リカはジュリの胸中を計算してけしかけた。

「フン…、それじゃあイズミに負けたことになるし、慎也の方も掴んでやるわ!」

開眼したジュリの反応は案の定だった…。





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