都市夢ーとしむー
その5/女たちの火花


「…アオイ、汚れ役はすべて私がやる。あなたはヘンネルとの折衝に集中すればいい。後の展開はもう読めてるから。まずは、郡司ヒサシがPTを抜ける…。その想定で後二人、補充要員を考えて今から当りをつけておいて。ああ、どちらも女性にね」

「…わかりました」

藤沼アオイは何故か漠然とながら、このジュリの思い描く絵柄が予測できた。
そしてそれを、ジュリがおそらく成し遂げるであろうことも…。

そう…、アオイはここ直近でジュリが日々、変異していることを感じ取っていたのだ。
一方のジュリもアオイに対しては、自分が違う自分になって行く様を意識的に曝しているようだった。

”アオイには、私の辿り着く先も何気なくイメージできてる。すでに…。愛するこの子だけには、私のおぞましい正体、本当の私を隠したくない…。人間を捨てきった後の自分で、私は藤沼アオイを愛し続けるんだもの…”

ジュリは悲壮な覚悟を持つに至っていた。


...


一方のその対角線上には、同期の清田イズミがいた。

”イズミ…、あなたには私のすべてをぶつける。人間を捨てる決意を踏んだこの私をしっかりと受けてもらうわ。ふふ…”

”開眼”したジュリが捉えた視界の中心はまさに、清田イズミと藤沼アオイの二人だった


...

その日の午後12時15分…。
”カレ”は約束の時間通りきた。

すでにイズミの方”はスタンバイ”を完了している。
つまり、”その場所”から約30M離れた地点に待機している慎也とのスマホ通話状態のオン、ボイスレコーダーのオン‥。
二人の連携は準備万端だった。


...


イズミと郡司はJリードレンから500M程の距離にあるF公園のベンチに隣あって座っている。

「郡司君、悪いわね。昼に呼び出して」

「いえ…」

「時間が限られてるから早速だけど…」

「どうぞ」

イズミは咄嗟に感じた。

”昨日会ったばかりなのに、様子が更にだ…。やっぱりこの人…”






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