都市夢ーとしむー
その6/社内のざわめき


その日の午後、Jリードレンの総務課…。

「今日の夕方、役員会開かれるの決まったみたいですね」

「うん、そうらしい。そうなると、海外営業部が取りまとめた例の事案は今日、承認されるでしょうね。それと、現地派遣チームの紅一点だった清田さんの昇格人事も併せて役員会に諮られるみたいよ」

「わー、じゃあ…、業推企画の同期、影山さんに続いて二人目の女性課長誕生ですかー!」

「それがさ…、なんか係長の話しでは、その上のポストってことで事前照会があったらしのよ。かなり上の役員クラスから…。まあ、飛び級人事となると社内規定とか、昇給の問題とかもあるから総務としては極力避けたいしね」

「あの…、その場合、部長補佐待遇ってことですよね。30前半の女性職員が…」

「そうなるのよね…。ウチは人事部も包括するからさ、福原課長、総務部長の頭越しで役員から迫られてて、アタマ抱えているみたい。会社の営業収益を支えてる部署からの要請じゃあね…。私たちの立場は弱者だよ。強く出られない。辛いよね、総務畑は…
先輩総務女子職員…、ここでは小さなため息が混じっていた…。


...


「でも、理屈抜きに清田さんが常識を覆す出世を果たすのは、私個人としては嬉しいです」

これに対し、後輩総務女子はきっぱりと正直な意思を示した。
そんな彼女を、先輩総務女子は目を細めて何かに感じ入ってる様子だ。

「まあね…。江副専務とできてるって噂の影山ジュリみたいな張ら黒女を抜いてくれたことは、我が社にとってプラスよ。第一次期副社長のイスを狙う常務は、女性躍進課のパイオニア気取りだったンだもん。今回、老舗の営業部があの天狗鼻の常務に毅然と対抗したってことでしょ。嬉しいわよ、そりゃあ、私でも。いや、この本音はJリードレン社員のマジョリティーよ」

「そうですよ!なら、先輩‥、ここは、我々下々の女子社員も社内規定の援用を指示しないと…」

「わかったわ。福原課長には私からも裏方女子部の熱い総意として、一言進言するわ」

「はい…、先輩、お願いします!」

俄かにことなかれ・地味に甘んじることが習性となっていた、総務の裏方女子たちは清田イズミ異例の飛び級昇格を支持に打って出たのだった…。





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