都市夢ーとしむー
その7/接近す…


二人はこの夜、明らかに”核心”に近づいた。
”そこ”に…。

「…そう。この都市伝説、私たちの会社のあるS区本陣坂通り周辺がメインステージってことになってるのね」

「ただ、所詮はうわさや伝聞がベースになってるってことを頭に入れとかないと…。根拠がないってのが前提だから。…でもまあ、今オレ達が向き合ってるのは、常識じゃあ消化しきれないトンデモな輩なんだろうし、ウワサだ又聞きだで弾いてたら、そもそもそこで終わっちゃうし…。ふう…、ここは”仮説”ありきで”全体”を醸しださないとな」

二人は何ともしんどいため息を交互させ、”前”に進んでいった。

...


「ジェリカか…。私は2、3度しか行ったことないけど…。まあどう見ても、女子中高生のたまり場ってとこだし、それに店内の造りのせいか、話がやたらと通るって印象は受けた。確かに…」

「うん…。総務の同期、ああ、女子社員だけど…、彼女はそこでダベってる女子中高生の会話がなんか面白くて、それ目当てでランチ時や会社の帰りに、後輩とよく足を運んでるそうでね。」

「そこで、例の都市伝説が耳に入ってきた訳ね」

「そう。それも、日々新ネタ更新ってレベルで、しかも、その主要舞台が自分の会社付近ってんで、彼女らすっかりマイブームってことになって…。ああ、約2年前の話になるよ」

まぎれもなく、この都市伝説の発信震源地は本陣坂通り下のジェリカだった…。

...


「ある日、彼女らの会話から、Jリードレンの社員ってことがわかったらしく、常連の女子高生3人組の方から声がかかってきたってことさ。ああ、ウチの女子社員が急死した時、”それ”が社内でも話題になっただろ?」

「うん…。亡くなる前に白日夢を見て、白いバスだととか黒いスーツの若い女だとかってね。そうか…、それをジェリカで話してるのを、都市伝説の最新ネタに夢中な女子高生が逆にネタを聞いてきたということね…」

「まあ、その3人組とはそれがきっかけで繋がりができたそうでね。それからくらい後、3人組の同級生が”それ”ってことで突然死したらしいんだが、彼女らは刑事の聴取を受けたりしたことなんかも直接話を聞いたようだ」

慎也の話は意識して、まさしく起承転結に沿ってだったが、イズミは真剣なまなざしで聞き入っていた…。




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