都市夢ーとしむー
第六章/怯まぬ人間の根
その1/帰路に着く男
”もうすぐ首都高に入る…。日下に連絡入れとくか…”
沢井は高速を運転中の車内から、ハンズフリーで弁護士である日下のケータイに発信した。
『もしもし…』
「ああ、日下…、間もなく首都高だ。そうだな…、そっちには3時前に着くかな。少し早くなりそうだが、いいか?」
『了解だ。でも、別に最初の予定通り、明日でもいいんだぞ。こっちは今週いっぱい事務所仕事だし。疲れてるだろう?』
「明日は急な面会が入ってな。例の白日夢に襲われた女性と彼氏だ」
『そうか…』
「まだ、初期過程でバスまで行ってないらしいが、急がないとな。だからよう、お前とは今日中に会って浅間さんの話を伝えたい。彼女の見立てでは、ここへきて新たな段階に入ったそうなんだ」
『わかった。とにかく安全運転で頼むぞ。詳しくは会ってからでいい』
「ふふ…、オレが警察官で交通違反の常連だったってのを、お前は昔からよく知ってるからな…。まあ、スピードは抑えて帰るさ」
沢井は約130キロで練馬インター約5キロ地点を通過した。
...
1年半前、高校生の妹が突然この世を去った。
まさに何の予兆もない、16歳の若さでの心筋梗塞…。
立ったひとつの前兆らしきモノが、白日夢を見ていたことだった。
”オレは忙しさにかまけてカスミのその前兆をスルーしていた。すでに両親がなく、ただ一人身近にいた兄のオレが何の力にもなってやれなかったんだ…。クソッ…!”
以降、彼はS区内で頻発する”妹のケース”での突然死を、刑事をやめた立場で真相究明することを自らに課した。
それは、浅間ユイという50代の女性によるところが大きかった。
...
その彼女は現在、人工透析を受ける病床の身だった。
このところ、体調が小康状態を保っているということで、一昨日より、彼女の故郷である長野を尋ねていたのだ。
”なんと、Jリードレンの現役社員か…。しかも直近でその子の同期も持ってかれたと…。浅間さんの言う通りだ。急がないと…”
沢井は強い危機感を募らせていた。
”もうすぐ首都高に入る…。日下に連絡入れとくか…”
沢井は高速を運転中の車内から、ハンズフリーで弁護士である日下のケータイに発信した。
『もしもし…』
「ああ、日下…、間もなく首都高だ。そうだな…、そっちには3時前に着くかな。少し早くなりそうだが、いいか?」
『了解だ。でも、別に最初の予定通り、明日でもいいんだぞ。こっちは今週いっぱい事務所仕事だし。疲れてるだろう?』
「明日は急な面会が入ってな。例の白日夢に襲われた女性と彼氏だ」
『そうか…』
「まだ、初期過程でバスまで行ってないらしいが、急がないとな。だからよう、お前とは今日中に会って浅間さんの話を伝えたい。彼女の見立てでは、ここへきて新たな段階に入ったそうなんだ」
『わかった。とにかく安全運転で頼むぞ。詳しくは会ってからでいい』
「ふふ…、オレが警察官で交通違反の常連だったってのを、お前は昔からよく知ってるからな…。まあ、スピードは抑えて帰るさ」
沢井は約130キロで練馬インター約5キロ地点を通過した。
...
1年半前、高校生の妹が突然この世を去った。
まさに何の予兆もない、16歳の若さでの心筋梗塞…。
立ったひとつの前兆らしきモノが、白日夢を見ていたことだった。
”オレは忙しさにかまけてカスミのその前兆をスルーしていた。すでに両親がなく、ただ一人身近にいた兄のオレが何の力にもなってやれなかったんだ…。クソッ…!”
以降、彼はS区内で頻発する”妹のケース”での突然死を、刑事をやめた立場で真相究明することを自らに課した。
それは、浅間ユイという50代の女性によるところが大きかった。
...
その彼女は現在、人工透析を受ける病床の身だった。
このところ、体調が小康状態を保っているということで、一昨日より、彼女の故郷である長野を尋ねていたのだ。
”なんと、Jリードレンの現役社員か…。しかも直近でその子の同期も持ってかれたと…。浅間さんの言う通りだ。急がないと…”
沢井は強い危機感を募らせていた。