都市夢ーとしむー
その2/出会い


”もう1年半以上前になるのか…”

当時、都内S署捜査2課の刑事だった沢井信哉は、その日、浅間ユイを見かけた。

『…だから、何度も申してます。私共の捜査内容を第3者にお教えすることは法律で禁じられているんです。当たり前ですよ、そんなこと、むやみやたらと外部にもらしてたら捜査に支障をきたす。捜査で知り得たことには秘匿義務を負ってるんですよ』

「私は何も捜査のことを教えてくれとは言ってません。ただ、このS署管轄所内で、最近亡くなられた比較的若い女性が、白日夢に悩まされていたケースはないかとお尋ねしてるんです」

『ですから、守秘義務でそれもできませんって!奥さん、だいたい、そんあこと聞いてどうすつもりですか?あなた…、占い師とかそんな類なんじゃないんですか』

沢井が所に戻ると、捜査2課のカウンターで、そんな押し問答の風景が目に入った。

...


「おい、なんだ、あれは…」

「いやあ…、もう30分以上粘って、なかなか帰らないんですよ。何でも、S区周辺の若い若い健康な女性が急死してるケースが多いはずだ。その原因について心当たりがあるからって‥」

「ふーん…。で、彼女は我々に何を要求してるんだ?」

「女性が急死したり突然死するちょっと前に、変な夢を見てた人はいないかって…。家族とか友人とか学校の先生とかには告げてる場合が多いから、警察で把握してることを教えてくれって」

「うーん…。夢ねえ…」

「まあ、教えられる訳ないですよ、こっちの捜査上知り得たことを第三者になんか…。そしたらあの人、今後警察で白いバスの白日夢を見て悩んでるとか、その類の情報が入ったら連絡先書いて置いて行くから、その都度連絡くれって…」

「…」

沢井はじっと、女性の様子を観察するように見つめていた。
そして…、しばらくすると、彼女の建ている場所に向かっていった。

...


「沢井さん!」

後輩の刑事が呼び止めると沢井は振り向き、「まあ、いいからいいから…」と言って軽くかわした。

「あのう…、奥さん、警察官が軽口だったらこの国の治安は保てませんよ。やたらなことは教えられないのが原則です。ですから、こちらからご要望の件をお知らせすることはできないんです。すいませんが。今日は連絡先のメモを残されてお帰り下さい」

窓口で対応に当たっていた職員は訝しげな表情をしている‥。





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