都市夢ーとしむー
その6/ある依頼



”コイツ…、モロ、Jリードレンに何かアリだって反応だろうが”

「日下…、どうした?Jリードレンって会社、何か引っかかるのか?」

それは刑事の目だった。

”沢井には無駄に隠しても仕方ない…。この際だ、最低限でも言っておくか”

こんな際、この日下という男は真面目で慎重居氏な弁護士ではあるが、大胆な決断をいとも簡単に下してしまうナチュラルさを備えていた。
その日下はあっさりと”告白”した。

...


「…実は、その会社の某人物から、社内に関連した調査依頼を受けてな。これは当然、業務上の守秘義務になるんで、お前の胸の内で絶対に収めてくれなきゃ困るぞ」

「ああ、承知してる」

「…まあ、実際には”内偵”になるが、その結果によっては法的措置も想定してるそうなんで、ウチで委託をな」

「そうか…。日下、これは独り言だ。…調査対象は会社のお偉いさんなのかなあ…」

”この野郎…、さっそくカマかけかよ”

「元デカさんの独り言は確かに耳に入った」

「感想はどうだ?」

「あのなあ…、言える訳ねーだろ。わかっててふざけたマネすんなって」

沢井はここで煙草の火を灰皿に押し消すと、応接のイスに背をもたれてニヤニヤしながら日下を観察するように見ていた。


...


「…これまた俺の直感だが、リカがJリードレンを”見染めた”件と繋がりが出てくる気がする」

「だから何なんだよ。この事案はウチの事務所が委託を受けた一事案だ。一切口外できない。今言ったばかりだ」

「じゃあ、明日Jリードレンの二人とは、お前も一緒に会って話を聞いてくれ。同じ白日夢を見て間もなく命を失った少女から、”委託”を受けた一事案にあたった弁護士の立場としてな。第一、お前はその事案の少女の不可解な死が尾を引いてて、俺との共同戦線に乗っかったんだろう?今日、浅間ユイとの面会内容を聞いてるのもその線上だ。違うのか?」

「…」

ここまで一気に突きつけたられては、日下も反論のしようがなかった。

「まあ、俺の依頼者と同じ夢を見て、その後同じように突然死んだ二人とは偶然同じ会社ってことだろうが…。三人目の子には何としても消えて欲しくない。だから、俺も直に話しを聞いてみたい気はする」

彼は敢えて今の心の中を正直に吐き出した。
それは、一弁護士という立場を離れて…。




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