堕落シンデレラは秘密に同居する。👠

 男子は優しく笑う。

「ま、また明日っ……」

 わたしがそう言うと、すごく嬉しそうな顔をする。

 蓮翔は左肩からわたしの鞄を降ろし、わたしに押し付けてきた。

 わたしが自分の鞄を受け取り、左肩にかけると、

「行くぞ」

 蓮翔はぐいっと左手で私の右腕を掴み、歩き出す。

「蓮翔っ、今の誰?」

「誰って同クラの渚沢詩朗(なぎさわしろう)だろ」

「へ~」
 わたしは真顔で言う。

「へ~って、同クラの名前も知らないとかっ」

「高校久々だから分かる訳ないし、そもそも興味ないし」

「少しは興味持てよ。人気小説家になるんだろ?」

「もう人気です~!」

「へぇへぇ」

 ムッムカツクッ!! 

「ところで、しろうって漢字?」
「それともカタカナ?」

「詩集の詩に朗読の朗って書いて詩朗」

「ろうどくの、ろう?」
 わたしは首を傾げる。

「漢字が分からない読まれない小説家とか終わってんな」

「よ、読まれる小説家だもん!」
「それより、漢字教えてよ」
 わたしがそう言うと、左手でわたしの右腕を掴んだまま立ち止まる蓮翔。


「左手出せ」

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