堕落シンデレラは秘密に同居する。👠

「左手?」

 わたしは左手を蓮翔に向けて出す。

 蓮翔は左の掌に右の人差し指で朗と書く。

 たったそれだけのことなのに、
 胸がドキドキして、くすぐったくって、なんか……。

「これで、分かったか?」

「う、うんっ……」

「なんかお前、顔、赤くね?」

 わたしは蓮翔から目線をずらす。

「そ、そんなことないよっ」

「ふーーん」

 蓮翔はそう言うと、左手でわたしの右腕を掴んだまま再び廊下を歩き出す。

「……し、詩朗くんとは仲良いの?」

「まあな」

「詩朗くんって、本好きなの?」

「らしいな」

 らしいなって、
 なんか、仲いい割には他人行儀だなぁ……。 

「……もしかして、詩朗くんから小説のこと教えてもらってたり?」
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