新そよ風に乗って 〜慈愛〜
高橋さんが会社のIDを見せてというので係の人に搭乗券と一緒に会社のIDを見せると、そこは航空会社の特権というか、一緒に入れて貰えた。
此処が、ファースト、ビジネスクラスのラウンジ……。何だか、別世界。高そうなお酒が沢山並んでいて、お料理もみんな美味しそう。少しお腹が空いていたので、パスタを少しと、お寿司と暫く日本食が食べられないと思って根野菜の煮物を取って摘んだ。
あ、開かない。
どうしよう……。炭酸水が飲みたくて、ペットボトルのものを貰ってきたのまでは良かったけれど、妙に今日のは硬くてキャップが開かない。
「下、持て」
「えっ?」
言われるまま、ペットボトルの下を持っていると、高橋さんがビールを飲みながら左手でペットボトルのキャップを開けてくれた。
「す、すみません。ありがとうございます」
「力がない時は……」
そういうと、高橋さんが立ってもう1本炭酸水のペットボトルを持ってきた。
「発想を変えるんだ」
「発想……ですか?」
「無理にキャップを開けようとするから駄目なんだ。キャップを持ってキャップには力を加えず、ペットボトルの底の部分。そっちに力を入れて回す。そうすると開かなかったキャップも開く。やってごらん」
「えっ? でも、こんなに2本も飲めないです」
「大丈夫だ。俺が飲む」
そう言うと、高橋さんはキャップの開いていないペットボトルを指差した。
「こうですか?」
高橋さんに言われた通り、ペットボトルの底の部分に力を入れて回してみると、不思議とキャップが先ほどより力を入れなくても開いた。
「ふ、不思議……」
「だろう? この原理は他のもの、例えば瓶にも使える。勿論、硬く難しいものもあるが、キャップが硬い場合は底の部分を回して開けることも出来るという手段も覚えておくと良いかもな」
そう言って、高橋さんはビールを飲んだ。
高橋さんは、その後もビールを飲みながらチーズとサンドイッチを摘んでいた。この時、会話をしながら分かったことがあった。
『ビジネスから、ファーストにチェンジ出来る』 と、カウンターの女性が言っていたのは、年間の搭乗回数が多い乗客は搭乗履歴がカウンターで即座に出るので、その時に空席があれば自動的にシートのランクを上げてくれるらしい。勿論、料金はそのまま。でも、今回は私が一緒だったので、高橋さんはそれを断ったらしい。社長との話の兼ね合いもあったのかもしれないが、何だか悪いことをしてしまった気がする。元々、高橋さんはファーストで行けるはずだったのに。
シートのACかHKの5と6というのは座席番号のことで、前後席に挟まれず、更にどちらも左右の端から2席なので、高橋さん曰く、 『人の動きをあまり気にしないで済むから、ゆっくり出来る』 のだそうだ。
話を聞きながらその内容に驚いてしまい、いったい高橋さんの頭の中の構造はどうなっているのか、1度頭の断面をCTで撮って見てみたいとそんな不謹慎なことを考えてしまった。
此処が、ファースト、ビジネスクラスのラウンジ……。何だか、別世界。高そうなお酒が沢山並んでいて、お料理もみんな美味しそう。少しお腹が空いていたので、パスタを少しと、お寿司と暫く日本食が食べられないと思って根野菜の煮物を取って摘んだ。
あ、開かない。
どうしよう……。炭酸水が飲みたくて、ペットボトルのものを貰ってきたのまでは良かったけれど、妙に今日のは硬くてキャップが開かない。
「下、持て」
「えっ?」
言われるまま、ペットボトルの下を持っていると、高橋さんがビールを飲みながら左手でペットボトルのキャップを開けてくれた。
「す、すみません。ありがとうございます」
「力がない時は……」
そういうと、高橋さんが立ってもう1本炭酸水のペットボトルを持ってきた。
「発想を変えるんだ」
「発想……ですか?」
「無理にキャップを開けようとするから駄目なんだ。キャップを持ってキャップには力を加えず、ペットボトルの底の部分。そっちに力を入れて回す。そうすると開かなかったキャップも開く。やってごらん」
「えっ? でも、こんなに2本も飲めないです」
「大丈夫だ。俺が飲む」
そう言うと、高橋さんはキャップの開いていないペットボトルを指差した。
「こうですか?」
高橋さんに言われた通り、ペットボトルの底の部分に力を入れて回してみると、不思議とキャップが先ほどより力を入れなくても開いた。
「ふ、不思議……」
「だろう? この原理は他のもの、例えば瓶にも使える。勿論、硬く難しいものもあるが、キャップが硬い場合は底の部分を回して開けることも出来るという手段も覚えておくと良いかもな」
そう言って、高橋さんはビールを飲んだ。
高橋さんは、その後もビールを飲みながらチーズとサンドイッチを摘んでいた。この時、会話をしながら分かったことがあった。
『ビジネスから、ファーストにチェンジ出来る』 と、カウンターの女性が言っていたのは、年間の搭乗回数が多い乗客は搭乗履歴がカウンターで即座に出るので、その時に空席があれば自動的にシートのランクを上げてくれるらしい。勿論、料金はそのまま。でも、今回は私が一緒だったので、高橋さんはそれを断ったらしい。社長との話の兼ね合いもあったのかもしれないが、何だか悪いことをしてしまった気がする。元々、高橋さんはファーストで行けるはずだったのに。
シートのACかHKの5と6というのは座席番号のことで、前後席に挟まれず、更にどちらも左右の端から2席なので、高橋さん曰く、 『人の動きをあまり気にしないで済むから、ゆっくり出来る』 のだそうだ。
話を聞きながらその内容に驚いてしまい、いったい高橋さんの頭の中の構造はどうなっているのか、1度頭の断面をCTで撮って見てみたいとそんな不謹慎なことを考えてしまった。