新そよ風に乗って 〜慈愛〜
初めて乗ったビジネスのシートは、エコノミーと違って私には思いっきり広く感じられた。そして、座席数が少ない。これがファーストになったら、いったいどうなっちゃうんだろう? 動く部屋のような感じで、ベッドみたいなシートなんだろうか? 本当に驚くことばかりで、見るもの触るものに、いちいち興奮している。隣は、高橋さんだけ。真ん中のシートの人とは少し離れているので、まるで2人だけの空間のような錯覚に陥る。シートの幅も広いし、足置きもある。
うわぁ。
シートのリクライニングを動かすと、フルフラットにもなっちゃう。
遠足気分の子供のような私のはしゃぎっぷりを見て、高橋さんは微笑みながら離陸までの間、CAが持ってきてくれた新聞を読んでいた。
離陸して暫くすると、飲み物のリクエストを聞きにCAが来た。
何にしよう?
メニューを見ながら、迷ってしまう。
高橋さんは、何を頼むのかな?
「僕は、ビールを。何にする?」
CAに言いながら、高橋さんが私に聞いてくれている。
迷っちゃう。何にしよう。
「彼女は、グアバジュースで」
エッ……?
決める前に、高橋さんに言われてしまった。
「いいだろう? それで。今から酔われても、困るしな」
酔われてもって……。
「かしこまりました」
少しして、オーダーした飲み物を持ってきてくれたCAは、私の席に先にコースターを敷いて、グアバジュースのグラスをテーブルに置いてくれた。
「グアバジュースでございます」
「ありがとうございます」
同じように、高橋さんにも先にコースターをテーブルの上に敷いた。
エッ……。
何?
そして、グラスを置いてビールの缶のプルタップを開けてグラスに注ぐと、まだビールが残っている缶をグラスの隣に置いた。
「ビールでございます」
あれ?
今、何をしたの?
コースターを、1度裏返してから置いた気がする。しかも、高橋さんにわざわざ見せてから置いた感じがする。
何故?
「どうぞ、ごゆっくりお寛ぎ下さい」
そう言ってお辞儀をすると、CAは行ってしまった。
何気なく隣に座っている高橋さんを見たが、特に変わった様子はない。きっと、CAが間違えて置いただけなのかもしれない。そんな些細なことだったが、何となくその行動が気になった。
暫くすると食事の時間になったが、これがまた想像を遥かに超えた内容で、エコノミーでも食事は選べたけれど、その選べる内容や食器に至るまで全てが異なり、そして何より食事の温かさや美味しさはやはり比較にならなかった。あまりの私の喜びように、高橋さんも食事の時だけは許してくれて、ちゃっかり一緒にワインを頂いた。
先ほどのCAが食事の片付けをしてくれたけれど、やはり思い過ごしだったようで、あれから何事もなかったようにごく普通に食事の片付けをするとそのまま行ってしまった。
「シートをフルに倒した方が、ゆっくり眠れるぞ」
「あっ、はい」
食事も終わって機内も暗くなったので、周りをキョロキョロ見渡して真似をしながら高橋さんに言われたとおり、シートをフルフラットに倒した。高橋さんを見ると、フルフラットにしたシートの上で、ブランケットを腰から下に掛けていたので真似をしてブランケットを掛けてみたが、長すぎて引きずって床についてしまい、慌てて胸のところまでブランケットを引っ張り上げた。
うわぁ。
シートのリクライニングを動かすと、フルフラットにもなっちゃう。
遠足気分の子供のような私のはしゃぎっぷりを見て、高橋さんは微笑みながら離陸までの間、CAが持ってきてくれた新聞を読んでいた。
離陸して暫くすると、飲み物のリクエストを聞きにCAが来た。
何にしよう?
メニューを見ながら、迷ってしまう。
高橋さんは、何を頼むのかな?
「僕は、ビールを。何にする?」
CAに言いながら、高橋さんが私に聞いてくれている。
迷っちゃう。何にしよう。
「彼女は、グアバジュースで」
エッ……?
決める前に、高橋さんに言われてしまった。
「いいだろう? それで。今から酔われても、困るしな」
酔われてもって……。
「かしこまりました」
少しして、オーダーした飲み物を持ってきてくれたCAは、私の席に先にコースターを敷いて、グアバジュースのグラスをテーブルに置いてくれた。
「グアバジュースでございます」
「ありがとうございます」
同じように、高橋さんにも先にコースターをテーブルの上に敷いた。
エッ……。
何?
そして、グラスを置いてビールの缶のプルタップを開けてグラスに注ぐと、まだビールが残っている缶をグラスの隣に置いた。
「ビールでございます」
あれ?
今、何をしたの?
コースターを、1度裏返してから置いた気がする。しかも、高橋さんにわざわざ見せてから置いた感じがする。
何故?
「どうぞ、ごゆっくりお寛ぎ下さい」
そう言ってお辞儀をすると、CAは行ってしまった。
何気なく隣に座っている高橋さんを見たが、特に変わった様子はない。きっと、CAが間違えて置いただけなのかもしれない。そんな些細なことだったが、何となくその行動が気になった。
暫くすると食事の時間になったが、これがまた想像を遥かに超えた内容で、エコノミーでも食事は選べたけれど、その選べる内容や食器に至るまで全てが異なり、そして何より食事の温かさや美味しさはやはり比較にならなかった。あまりの私の喜びように、高橋さんも食事の時だけは許してくれて、ちゃっかり一緒にワインを頂いた。
先ほどのCAが食事の片付けをしてくれたけれど、やはり思い過ごしだったようで、あれから何事もなかったようにごく普通に食事の片付けをするとそのまま行ってしまった。
「シートをフルに倒した方が、ゆっくり眠れるぞ」
「あっ、はい」
食事も終わって機内も暗くなったので、周りをキョロキョロ見渡して真似をしながら高橋さんに言われたとおり、シートをフルフラットに倒した。高橋さんを見ると、フルフラットにしたシートの上で、ブランケットを腰から下に掛けていたので真似をしてブランケットを掛けてみたが、長すぎて引きずって床についてしまい、慌てて胸のところまでブランケットを引っ張り上げた。