新そよ風に乗って 〜慈愛〜
高橋さんに聞くに聞けないまま、ニューヨークのケネディ空港に到着してしまった。入国審査を済ませてバゲージが出てくるのを待っていると、不意に高橋さんに腕を掴まれた。
「こっち」
「えっ? えっ? あの……」
「此処の空港は危ないから、俺から離れるなよ」
高橋さんは、そう言って私の左手を掴むと出て来た私のバゲージの1つをカートに乗せてくれた。
「すみません……ありがとうございます」
今からこんなことで、大丈夫なんだろうか。機内のあの出来事以来、何となく気まずい。でも、そう思っているのは私だけなのかもしれないけれど。
ゲートを出ると、支社の誰かが迎えに来てくれているとばかり思っていたが誰も迎えに来てはおらず、そのまま空港施設内にあるレンタカーの受付窓口に高橋さんと向かうと、事前に打ち合わせをしてあったようで、ロス支社の人が予め手配してくれてあったレンタカーを借りる手続きを高橋さんは始めた。
出張にいつも一人で行っている時、高橋さんはこうして何でも一人でこなしているんだろうか……大変だろうな。
隣で会話を聞いていたら、ネイティブな英語で目を瞑っていたらアメリカ人と勘違いしてしまいそうなほど、高橋さんの流暢な英語の会話に驚いた。雲泥の差。自分の語学力のなさに、嫌悪感すら覚える。レンタカーの手続きが終わったので、用意された車のトランクにバゲージを載せて滞在先のホテルへと向かう。途中、テレビでよく見る風景を目の当たりにして、何度となく外の景色に釘付けになったが、心の奥底に何かが引っ掛かっていて紗が掛かっているような感じで、このスケールの大きさがダイレクトに心に響いて来ない。
「どうかしたのか?」
エッ……。
「い、いえ、何でもありません」
「少し渋滞しているが、もう少しで着くから」
「はい」
高橋さんは、走りながら通り過ぎるビルやお店、公園等の名称を教えてくれながら色々説明してくれた。住んでいただけあって、ガイドブックには書いていないことまでよく知っている。感心したり、驚いたりしながらその説明を聞いているうちにホテルに到着した。
高橋さんが、自然な動作でポーターにチップを渡す。
本当に、日本人じゃないみたい。違和感なく、異国の地に溶け込んでいる。
フロントで手続きを済ませて部屋に着いたが、何故か高橋さんは私の部屋の鍵を渡してくれない。それどころか、一緒にエレベーターに乗ったベルボーイも、部屋の鍵を開けて最初に私を中に入れてくれようとしたので驚いて遠慮すると、高橋さんのバゲージと一緒に私のバゲージも2つとも同じ部屋に運び込んでいた。
な、何で?
「高橋さん。あの、私の部屋は……。まだ、部屋の鍵も頂いてないのですが」
「ああ。一緒の部屋だから」
は、はい?
一緒の部屋だからって……嘘でしょう?
まさか、冗談。有り得ない。
「じょ、冗談ですよね?」
「こんなところで冗談言ってどうする? さあ、早く入って」
嘘……信じられない。
ベルボーイも荷物を置いて高橋さんからチップを受け取ると立ち去ってしまい、理解出来ないまま急かされるように部屋の中に入った。
うわっ。
「こっち」
「えっ? えっ? あの……」
「此処の空港は危ないから、俺から離れるなよ」
高橋さんは、そう言って私の左手を掴むと出て来た私のバゲージの1つをカートに乗せてくれた。
「すみません……ありがとうございます」
今からこんなことで、大丈夫なんだろうか。機内のあの出来事以来、何となく気まずい。でも、そう思っているのは私だけなのかもしれないけれど。
ゲートを出ると、支社の誰かが迎えに来てくれているとばかり思っていたが誰も迎えに来てはおらず、そのまま空港施設内にあるレンタカーの受付窓口に高橋さんと向かうと、事前に打ち合わせをしてあったようで、ロス支社の人が予め手配してくれてあったレンタカーを借りる手続きを高橋さんは始めた。
出張にいつも一人で行っている時、高橋さんはこうして何でも一人でこなしているんだろうか……大変だろうな。
隣で会話を聞いていたら、ネイティブな英語で目を瞑っていたらアメリカ人と勘違いしてしまいそうなほど、高橋さんの流暢な英語の会話に驚いた。雲泥の差。自分の語学力のなさに、嫌悪感すら覚える。レンタカーの手続きが終わったので、用意された車のトランクにバゲージを載せて滞在先のホテルへと向かう。途中、テレビでよく見る風景を目の当たりにして、何度となく外の景色に釘付けになったが、心の奥底に何かが引っ掛かっていて紗が掛かっているような感じで、このスケールの大きさがダイレクトに心に響いて来ない。
「どうかしたのか?」
エッ……。
「い、いえ、何でもありません」
「少し渋滞しているが、もう少しで着くから」
「はい」
高橋さんは、走りながら通り過ぎるビルやお店、公園等の名称を教えてくれながら色々説明してくれた。住んでいただけあって、ガイドブックには書いていないことまでよく知っている。感心したり、驚いたりしながらその説明を聞いているうちにホテルに到着した。
高橋さんが、自然な動作でポーターにチップを渡す。
本当に、日本人じゃないみたい。違和感なく、異国の地に溶け込んでいる。
フロントで手続きを済ませて部屋に着いたが、何故か高橋さんは私の部屋の鍵を渡してくれない。それどころか、一緒にエレベーターに乗ったベルボーイも、部屋の鍵を開けて最初に私を中に入れてくれようとしたので驚いて遠慮すると、高橋さんのバゲージと一緒に私のバゲージも2つとも同じ部屋に運び込んでいた。
な、何で?
「高橋さん。あの、私の部屋は……。まだ、部屋の鍵も頂いてないのですが」
「ああ。一緒の部屋だから」
は、はい?
一緒の部屋だからって……嘘でしょう?
まさか、冗談。有り得ない。
「じょ、冗談ですよね?」
「こんなところで冗談言ってどうする? さあ、早く入って」
嘘……信じられない。
ベルボーイも荷物を置いて高橋さんからチップを受け取ると立ち去ってしまい、理解出来ないまま急かされるように部屋の中に入った。
うわっ。