新そよ風に乗って 〜慈愛〜
「もう、起きてたのか?」
「は、はい。あの……」
直ぐさま高橋さんは、私が手にしていたシャツに気づいた。
「さっき、それ捨てたんだが……」
やっぱり、高橋さんは捨てたんだ。でも……。
「どうして……」
「ん?」
俯いたまま言ったせいなのか、声が小さくて聞き取れなかったのか、高橋さんが聞き返した。
「どうして、此処に捨てたんですか?」
「どうして?」
口紅の痕が付いたシャツを、敢えて此処に何故捨てたの?
機内で、CAと何があったの?
本当は、そう高橋さんに詰め寄りたかった。
「此処じゃなくても……」
「何がだ?」
抑揚のない声と冷ややかな視線で、高橋さんに問い返された。
「此処に……此処に捨てないで欲しかった……です」
捨てるのなら、分からないところで捨てて欲しかった。
「ハッ? そこは、ゴミ箱だろう? 何で、捨てちゃいけないんだ?」
高橋さんは、口紅の痕が付いていることも、それが機内でCAとの出来事で付いたものだということも、私が気づいていないと思っているのかもしれない。
「あの……捨ててはいけないとは、言ってないんです。でも、こんな……こんな口紅の痕が付いたシャツを、こういう目に付く所に捨てるんですか? 少し無神経じゃないですか? 私……私、見ちゃったんです。高橋さんが機内で席を外されて戻ってきた時、その……高橋さんと、あのCAの人と何かあって……」
それ以上は、言えなかった。言えないというより、怖くて言葉に出来なかった。
『悪いけど、俺はその気ないから』
あの機内で高橋さんにハッキリと言われたことが、あまりにも哀しかったから。
「お前には、関係ないだろう?」
高橋さん……。
そう言うと、高橋さんは私の手からシャツを奪い、またゴミ箱に捨てた。
「嘘……また捨てるなんて……」
「お前は、いったい何がしたいんだ? 俺の捨てたものを拾って食って掛かってきたり、プライベートなことにまで首を突っ込んできたりして。何なんだ?」
酷い。
「は、はい。あの……」
直ぐさま高橋さんは、私が手にしていたシャツに気づいた。
「さっき、それ捨てたんだが……」
やっぱり、高橋さんは捨てたんだ。でも……。
「どうして……」
「ん?」
俯いたまま言ったせいなのか、声が小さくて聞き取れなかったのか、高橋さんが聞き返した。
「どうして、此処に捨てたんですか?」
「どうして?」
口紅の痕が付いたシャツを、敢えて此処に何故捨てたの?
機内で、CAと何があったの?
本当は、そう高橋さんに詰め寄りたかった。
「此処じゃなくても……」
「何がだ?」
抑揚のない声と冷ややかな視線で、高橋さんに問い返された。
「此処に……此処に捨てないで欲しかった……です」
捨てるのなら、分からないところで捨てて欲しかった。
「ハッ? そこは、ゴミ箱だろう? 何で、捨てちゃいけないんだ?」
高橋さんは、口紅の痕が付いていることも、それが機内でCAとの出来事で付いたものだということも、私が気づいていないと思っているのかもしれない。
「あの……捨ててはいけないとは、言ってないんです。でも、こんな……こんな口紅の痕が付いたシャツを、こういう目に付く所に捨てるんですか? 少し無神経じゃないですか? 私……私、見ちゃったんです。高橋さんが機内で席を外されて戻ってきた時、その……高橋さんと、あのCAの人と何かあって……」
それ以上は、言えなかった。言えないというより、怖くて言葉に出来なかった。
『悪いけど、俺はその気ないから』
あの機内で高橋さんにハッキリと言われたことが、あまりにも哀しかったから。
「お前には、関係ないだろう?」
高橋さん……。
そう言うと、高橋さんは私の手からシャツを奪い、またゴミ箱に捨てた。
「嘘……また捨てるなんて……」
「お前は、いったい何がしたいんだ? 俺の捨てたものを拾って食って掛かってきたり、プライベートなことにまで首を突っ込んできたりして。何なんだ?」
酷い。