新そよ風に乗って 〜慈愛〜
「良かったら、食べて」
「す、すみません。ありがとうございます」
「ちょっと、此処にお皿置かせてもらっておいていいかしら?」
「あっ。はい」
そう言って、折原さんは右手に持っていたお皿をテーブルの上に置くと、まだ人だかりがしているバイキングの料理が置いてある方を見た。
「遠慮しないで、先に食べてて。デザート確保してくるから」
「えっ? 折原さん。それでしたら、私が……」
立とうとした私を制して、あっという間に折原さんはまた人混みの中に紛れて行ってしまった。
何か、折原さんに悪くことしちゃった。ずっと席に座っていたから、目立ってしまったのかもしれない。せめて席を立って、みんなと同じように料理を取りに行くフリをすれば良かったかな。
今更、遅いかもしれないけれどウーロン茶を一口飲んでから席を立って、人だかりがしている方へと静かに近づいて行った。
「どうぞ」
「あっ。ありがとうございます」
ホテルのボーイさんが取り皿を差し出してくれたので受け取ったが、周りに人がいっぱいで料理も何も見えない。少し空いている場所に移動して、背伸びをしながら前を見たが何も見えないのでまた移動。場所を移動しながら背伸びをして見ていたが、何処も同じであまりよく見えなくてウロウロしていると、誰かにぶつかってしまった。
「す、すみません。ごめんな……」
「お皿、縦に大事に抱えていないで上に向けて」
エッ……。
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