新そよ風に乗って 〜慈愛〜

異国の彼女

高橋さんが寄りたいと言っていたショップは、ショッピングセンターの西の奥に位置する場所にあった。
あれ? 
高橋さんに付いて入ったショップに、見覚えがあった。
此処って、確か……日本にもある。でも、イメージしていたショップとは少し違うような? 日本にあるショップも、確かアメリカと同じ仕様で展開していたはずだから、ショップの中は暗い感じでミュージックもかなり大音量で流している。でも、このショップの店内は明るいし、ミュージックは流れているが、さほど大音量で流してはいない。もしかして、私がイメージしているショップとは違うの?
「あの、高橋さん」
「ん?」
問い掛けに気づいて振り返った高橋さんは、何気なく右腕している時計を見た。
「このショップって、日本のあのショップとは違うんですか?」
「いや、同じだ」
同じ?
「でも、照明とか雰囲気が違いますよね?」
「ああ。此処は、そのショップのアウトレットだからな」
「ア、アウトレット!」
思わず大きな声を出してしまい、慌てて両手で口を押さえた。
「ハハッ……。お前、途端に目の輝きが全然違うな」
「そ、そんなことないですよ」
「フッ……。このショッピングセンターは、全部アウトレットショップだ」
嘘……。
だって、さっき通ってきた通路の両側には、日本ではとてもじゃないけど高くて手が出ないショップが沢山あった。ああん。もっとよく値段も見てくれば良かった。
「ただ、本来のアウトレットはもっとスペースも広いし、ショップの数が違う」
「そ、そうなんですか?」
私には、このショッピングモールも凄く大きく見えるのに。
「週末、そっちに行ってみるか?」
「えっ? いいんですか? 連れて行って下さるんですか?」
「ああ。だから、今日は時間があまりないから下見だけで我慢してくれ」
「あっ、はい」
嬉しいな。高橋さんに、週末アウトレットに連れて行って貰えるなんて。
「こっち」
うわっ。
アウトレットに連れて行って貰うことを想像していたら、いきなり高橋さんに腕を引っ張られてショップの奥の方に連れて行かれた。
それにしても、山のように積み上げられた服、服、服。
これ、日本だと1万円以上しそうなシャツなのに、$19.99って……。欲しいなぁ。
横目でまるで宝の山に見える服を見ながら、ふと高橋さんを見ると、レジの横の棚に置いてあるコロンを手にとって店員と話していた。
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