新そよ風に乗って 〜慈愛〜
ぶつかってしまった人を見ると、高橋さんだった。
「高橋さん。すみません。ぶつかってしまって……うわっ……」
高橋さんは、自分のお皿に載っている料理を私のお皿に載せようとしてくれたその時だった。料理を取り終えた人が人を掻き分けるようにして席に戻ろうとしたのか、背中を押されて前のめりになってしまった。
「危ないから、あの壁沿いに立って少し待ってろ」
「えっ?」
高橋さんが指さした方を見ていると、手に持っていたお皿を高橋さんに黙って取られ、慌てて振り返ったがもうすでに高橋さんは一番端の方に行ってしまっていた。
高橋さん……。
『あの壁沿いに立って少し待ってろ』 そう言われた気がする。
仕方なく言われた壁のそばに立ちながら見ていると、人だかりのしている中でも高橋さんを探すことが出来た。
凄いな。右手だけで料理の載っているお皿2枚を持ってる。
「高橋さん。これ美味しいですから、どうぞ」
「高橋さん。何がお好きですか? 良かったら、エビチリも召し上がりません?」
見ていると、料理を取っている高橋さんのお皿に、女子社員達が色々載せようとしていたり、しきりに話し掛けている姿が見られ、そんな光景を目の当たりにしているうちに、自分は此処で何をしているんだか分からなくなっていった。
高橋さんがモテることは、百も承知だ。社員に人気があることも。そんな高橋さんと明日から出張に行くことが、何だか信じられない。本当に、私に海外出張のアシスタントが務まるんだろうか? 人の勢いに圧倒されて、バイキングの料理さえ取れずにいる私が……。
「高橋さん。すみません。ぶつかってしまって……うわっ……」
高橋さんは、自分のお皿に載っている料理を私のお皿に載せようとしてくれたその時だった。料理を取り終えた人が人を掻き分けるようにして席に戻ろうとしたのか、背中を押されて前のめりになってしまった。
「危ないから、あの壁沿いに立って少し待ってろ」
「えっ?」
高橋さんが指さした方を見ていると、手に持っていたお皿を高橋さんに黙って取られ、慌てて振り返ったがもうすでに高橋さんは一番端の方に行ってしまっていた。
高橋さん……。
『あの壁沿いに立って少し待ってろ』 そう言われた気がする。
仕方なく言われた壁のそばに立ちながら見ていると、人だかりのしている中でも高橋さんを探すことが出来た。
凄いな。右手だけで料理の載っているお皿2枚を持ってる。
「高橋さん。これ美味しいですから、どうぞ」
「高橋さん。何がお好きですか? 良かったら、エビチリも召し上がりません?」
見ていると、料理を取っている高橋さんのお皿に、女子社員達が色々載せようとしていたり、しきりに話し掛けている姿が見られ、そんな光景を目の当たりにしているうちに、自分は此処で何をしているんだか分からなくなっていった。
高橋さんがモテることは、百も承知だ。社員に人気があることも。そんな高橋さんと明日から出張に行くことが、何だか信じられない。本当に、私に海外出張のアシスタントが務まるんだろうか? 人の勢いに圧倒されて、バイキングの料理さえ取れずにいる私が……。