ぬいぐるみのぼくは、ずっと片想い

記憶

ここに来て、
たくさんの時間が過ぎていきました。

季節が変わると、教室には
新しい子どもたちがやってきました。

毎年、毎年、
たくさんの子どもたちに出会いました。

そして、
たくさんの笑顔を見せてもらいました。
だから、ぼくはいつも幸せでした。

人間なら幸せすぎて、
彼女と過ごした思い出も
すっかり忘れてしまったでしょう。

でも、彼女の誕生日がいつだったか、
今も覚えています。

彼女の部屋がどんなだったか、
目を閉じると浮かんできます。

彼女の顔も名前も、、、
全て、記憶にありました。

もし、ぼくが人間だったら、
心が苦しくなるのかもしれません。

ぼくを忘れていったことを
恨んでしまったかもしれません。


でも、ぼくはぬいぐるみでした。
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