天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
八月も中旬となり、連日体温よりも高い気温の日が続いている。
病院内は涼しいものの、通勤中は汗で前髪が張り付くほど暑く、ここ最近は体調が思わしくない。
(この一ヶ月は色々ありすぎて、そりゃあ夏バテにもなるよね)
祖母の入院をきっかけに彗に出会い、反発しながら惹かれ合って、驚くほどのスピードで婚約者というポジションまで上り詰めた。
怒涛の展開に戸惑ってはいるものの、求婚に頷いたことに後悔はない。
些か性急ではあるものの、根底には彗への気持ちがあるのだ。
プロポーズを受け入れて二週間が経ったが、彼は相変わらず忙しい。
新たに入院してきた難病を患う男性患者の手術の目処を立てるため、循環器内科と合同でチームを立ち上げ議論を交わしているらしく、帰宅して食事を終えると寝る直前まで勉強している。
それに加え、夏場は熱中症から心筋梗塞を引き起こす高齢者が多く、オンコールで病院へ呼ばれる回数も増えていた。
水族館以来デートはしていないし、サイズ直しを頼んでいた指輪も受け取りに行けていない。
あまりの激務に心配になるが、羽海にできることといえば家の中を快適に整え、栄養のある美味しい料理を作るくらいだ。