天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

羽海はいまだに慣れないマンションのエントランスを抜け、誰もいない玄関で「ただいま」と呟き靴を脱ぐと、すぐにキッチンへ向かい料理を始める。

今日は彗が早く帰れるかもしれないと言っていたため、腕によりをかけて、いつもより豪華な夕食を作る予定だ。

まずは炊き込みご飯をセットし、ほうれん草と人参の白和えに取り掛かる。以前彗に出した時に好評だったので、ヘビロテレシピとなっている。

次に包丁でたたいてミンチ状にした海老と椎茸の軸のみじん切りを混ぜて味付けし、椎茸の傘の部分に詰め、片栗粉をまぶしてから油で揚げる。

その間に牛肉ステーキ用の醤油と玉ねぎベースのソースを作った。

(ステーキは先生が帰ってきてから焼けばいいし、明日お休みならお酒も飲むかな。簡単なおつまみがあるといいかも)

夏が旬のししとうを豚バラで巻き、塩コショウをしてからカリッと色がつくまで焼く。

ぺんぎんやマンボウなど、可愛い海の動物のピックを刺し、食べやすく盛り付けていった。

ちょうどいいタイミングで玄関が開く音が聞こえ、パタパタとスリッパの音を立てながら出迎える。

「おかえりなさい」
「ただいま」
「よかった。今日は本当に早く帰れたんですね」

時計を見ると午後七時。ここ最近の彗を思えば、かなり早い帰宅だ。

< 126 / 227 >

この作品をシェア

pagetop