天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
隼人の話しぶりだと彼自身は医師ではなく、病院を継ぐのは彗だと渋々ながら認めているようだ。
だからこそ財団本体は長男の隼人が継ぐべきだと考えていたのに、彗が多恵に紹介された女性、つまり羽海と結婚することで、財団を継ぐのも彗になるのではと懸念しているのだろう。
羽海には一族経営の財団の後継問題など、違う次元の話すぎてピンとこないが、実際自分が結婚しようと決めた相手はそういう世界の住人なのだ。
(どうしよう、本当に私と結婚するのは財団を継ぐためだったとしたら……)
早とちりはよくない。あれこれ考えず、ただ彗に聞けばいい。
どれだけ頭でそう思っても、どうしてもよくない考えが消えてくれない。
羽海は嫌な想像を振り払うようにぎゅっと目を閉じて頭を振った。
のろのろと起き上がり、ソファの脇に置いていたバッグからスマホを取り出すと彗にメッセージを送った。
本来なら自分の食事を作ったり、彗が帰宅後に食べられる夜食を用意するのだが、今はとても動けそうにない。
(ちょっとだけ寝よう。そうすれば、嫌な気分も少しはよくなるはず)
自室ではぐっすり寝入ってしまうような気がして、羽海は再びソファで横になって目を閉じる。
心身ともに疲れ果てていたのか、すぐに夢の世界へ引き込まれていった。