天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
問題なく成功したと話すと、羽海は「コーヒーでも淹れますね」と不自然なほど顔を背けてキッチンへ行ってしまう。成功を褒め称えろとは言わないが、尋ねたからにはなにかひと言あってもいいのではと怪訝に思った。
食事を終えシンクに皿を持っていくと、そこにはひとり肩を震わせて蹲る羽海がいた。
気分が悪くなったのかと咄嗟に手を伸ばしたが、話を聞くと、手術した患者と仲良く話す間柄らしく、手術が成功してほっとして泣いてしまったようだ。
彗に涙を見せまいと、ひとりいじらしく泣く羽海に心を奪われた。
病院内で理不尽な言いがかりをつける看護師から庇った時の立ち居振る舞いからしても、彗などまったくお呼びではなく、凛として強い女性だと思っていた。
しかし、当然だがこうした弱く脆い部分も持っている。祖母とふたりで暮らしてきたのだから、強くならなくてはと気を張っていたのかもしれない。
これからは自分が守ってやりたい。
今までにない感情に驚きつつ、ようやく本当の意味で妻にしたい女性に出会ったと確信し、自分に執着しない女性がいいなどと言っていた過去の自分が滑稽なほど羽海と恋愛をしたいと思った。