天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

空はどんよりと曇り、八月最終週にも関わらず気温は三十度を下回っている。

彗から逃げるように実家に帰って二日が経った。

昨日の午前中はまぶたがパンパンに腫れ、とても外出できる顔ではなかったが、どれだけ落ち込もうと人間食べなければお腹が減る。

特に羽海は空腹を感じると気分が悪くなる食べづわりらしく、お昼を過ぎた頃に近所のスーパーに食料の買い出しに出かけた。

羽海の部屋はもぬけの殻ではあるが、その他は手つかずなので生活するのに不便はない。

食材を買い込み、簡単な昼食を済ませてふとスマホを見ると、彗からの着信やメッセージがずらりと並んでいた。

【どこにいる?】
【体調は悪くないか?】
【顔を見て話がしたい】
【頼む。無事だと連絡をくれ】

羽海を心配するメッセージの数々に心が揺れ、ようやく落ち着いたはずの涙腺が再び緩んだ。

(これも財団を継ぐためのお芝居? それとも……)

彗は帰宅して早々病院に呼び出され、かなり疲れているはずだ。

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