天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
早く休めばいいのに、何度も電話を掛けてはメッセージを残す彗を思うと、彼を労うための食事を作りにマンションへ帰りたい衝動に駆られた。
けれど今羽海の心の中はぐちゃぐちゃで、一晩では彗への想いも、今後自分がどうしたいのかも整理することはできなかった。
メッセージで【実家にいます。しばらくひとりで考えさせてください】とだけ送り、スマホの電源を切った。
実家でダラダラと過ごしながら彗やお腹の子供のことを考えたが、結局なにひとつ答えを出すには至らず。
子供を守るために東京を離れる案も浮かんだけれど、現実問題、入院中の祖母を残して行くなんてできないし、仕事を辞めて見知らぬ土地でひとりで生活するには相当の覚悟がいる。
かといって、なに食わぬ顔で彗のマンションに戻ることもできない。
前にも後ろにも進めず、こんなにも自分が弱い人間だなんて初めて知った。
病院からの呼び出しの電話が鳴る直前、彗がなにか言いかけていたのを思い出し、その時の辛そうな表情が蘇り胸が痛む。
彼になにも言わせず自分の感情だけを押し付けた自覚があるだけに、二日経った今、ようやく話を聞くべきだという理性が働き始めている。
(わかってるけど、彗さんの話を聞くのが怖い……)
ずっと布団に丸まっていたいが、仕事は待ってくれない。こういう時、恋愛相手と職場が一緒だというのはやりづらい。