天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
広いキッチンに蹲ったまま、見た目以上に逞しい腕に頬と腰をホールドされ、服越しにも伝わる体温に鼓動が速まっていく。
(な、なんで……?)
驚愕で涙は止まり、固まったまま何度もぱちぱちと瞬きを繰り返す。
ただ、突然与えられたキスに意外なほど嫌悪感は湧かなかった。
合わさるだけの唇が離れていく気配に喉を震わせると、名残惜しそうに舌の先で下唇を舐められビクッと肩が揺れる。
「み、御剣せん、せい……?」
自分たちは決してキスを交わすような仲ではなく、頭の中ははてなマークだらけ。
「泣くな」
彼は低い声でそれだけ言うと、再び顔を寄せてきた。
涙を止めるだけならば、もうその目的は達成されている。それでも彼はもう一度唇を重ねた。
先程の合わせるだけのキスとは違い、舌が唇の合わせを開けろと言わんばかりに往復する。
その擽ったさと、初めてのキスで息継ぎの仕方さえわからない息苦しさから、小さな吐息と共に口が開き、あっさりと彼を招き入れてしまう。
ぬるりと絡ませられた舌の感触に、ぞくっと腰に痺れが走った。