天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
「すみません、私ったら……」
「羽海が甘えてくるなんて滅多にないからな。いい気分だが、理性が利かなくなりそうだ」
「え?」
「いや、なんでもない。それより話がしたい。なにか飲み物を入れるから、ソファで待ってろ」
「それなら私が」
「いいから座ってろ。なにを飲む? 紅茶も控えた方がいいか?」
「あ、じゃあこの前ルイボスティーを買ったので、それを」
「ホット? アイス?」
「アイスでお願いします」
彼の気遣いに甘えてソファで待っていると、意外にも手際よくドリンクを準備して戻ってきた。
彗がキッチンに立っているところを初めてみたが、お湯を沸かしたりカップや茶葉を出したりする手付きに迷いがない。
「彗さん、もしかしてお料理できますか?」
「羽海ほどじゃないが、まぁ人並みには。なんで?」
「いえ、キッチンに立つのが様になってるなぁって」
「なんだそれ。飲み物淹れただけだろ」
隣に腰掛けながら可笑しそうに笑う彗を見て、じわりと目頭が熱くなる。
ここで最後に見た彗は、羽海と病院からの呼び出しの板挟みとなり、歯痒そうな顔で膝に拳を叩きつけて出ていく姿だった。