天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

彗の後押しもあり、羽海は財団運営の仕事を学ぼうと決めた。

清掃の仕事は体力勝負なので急ではあったが妊娠を機に退職させてもらい、今は御剣健康財団へ就職し、多恵の秘書として彼女の仕事をサポートしながら財団の在り方や医療施設の事務について勉強している。

彗は「産後落ち着いてからでも遅くないだろ」と不服そうだが、羽海は少しでも多く多恵から学びたかった。

貴美子は退院後、事前の計画通り御剣やすらぎホームに入所し、そこで得た友人と悠々自適に暮らしている。

リハビリの甲斐あって、杖は使うが自分の足で歩けるまでに回復した。

彗とふたりで結婚と妊娠の報告に行くと、目に涙を浮かべて「崇と麻美さんも喜んでるわね」と羽海の両親の分まで喜び、さっそく施設の自室に飾ってある夫の写真に手を合わせて報告していた。

その姿を見て、改めてどれだけ心配をかけていたのかを実感し、施設で新しい友人と第二の人生を送り始めた彼女に少しずつ恩返しをしたいと思う。

多恵について仕事を覚えていることに関しては、さすがの貴美子もとても驚いていたが、「やると決めたのなら真摯に学んで、素晴らしい病院を守ってちょうだいね」と激励された。

「ありがとう、おばあちゃん。それでね、これをおばあちゃんに書いてほしくて」
「まぁ、婚姻届? あら、多恵さんに書いてもらったのね。もうひとりは彗さんのお父様じゃなくていいのかしら?」

遠慮して彗を見上げた貴美子に、彗は微笑みを浮かべて大きく頷く。

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