天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

貴美子と多恵、そして彗からのとんでもない提案から三日。

あれだけ本人にきっぱりと断りを入れたはずが、羽海は今、彗のマンションのリビングにいる。

もちろん遊びに来たわけではない。今日から同居を余儀なくされたためだ。

祖母ふたりが結託し、入院中で動けない貴美子に代わり、鍵を預かった多恵が羽海の実家の部屋のものを丸ごと彗のマンションへ運び込ませていた。

それを知ったのは病院で清掃の仕事中。

これまで彗の噂を聞いていたものの興味がなかったため、院内ですれ違っていたのかもわからないし、特に気に留めていなかった。

だから羽海が彼の姿をしっかり見たのは三日前が初めて。

理解し難い条件付きの結婚の提案を断っただけの関係だが、間近で話した経験があるせいか、この三日は病棟の廊下ですれ違った彼をやけにはっきりと認識できた。

類まれな容姿はとても目立つ。あれだけのイケメンに、よく今まで気付かなかったものだと心の中で苦笑する。

とはいえ特段親しくなったわけでもないので、今日も不自然じゃない程度に会釈して通り過ぎるはずだったのに。

白衣姿の彗から突然、声を掛けられた。

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