天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

医学部に入学できず、現在は系列の富裕層向け介護付き有料老人ホームでケアマネジャーとして働いているが、あまりいい評判は聞こえてこない。

昔から享楽主義者で、いかに楽をして贅沢するかといったことしか考えていないため、彗は将来この病院だけでなく、財団自体を自分が継がなくてはならないと考えている。

気楽な独り身でいたいが、後継者のことを考えるとそうもいかない。そのため、伴侶となる女性には母のように弱い人ではなく、強くて自立した女性を求めていた。

条件は初対面で羽海に話した通り、恋愛感情を持って執着してこないこと。跡継ぎをもうけること。病院や財団の不利益になるようなスキャンダルを持ち込まないこと。

できればきちんとした常識を持ち、医師の仕事に理解がある女性を希望したいところだが、多くは望まない。

祖母いわく両親は恋愛結婚だったらしいが、家で泣き続ける母を見て育った彗には端から恋愛結婚をしようなどという考えはなく、心惹かれる女性にも出会ったことがない。

これまでも条件を満たしそうな、言ってみれば金とステータスにしか興味のなさそうな女性と何人か交際してみたが、結局みんな彗に過度な期待をし始め、会えないと不満を漏らすようになる。それでは母の二の舞いだと、すぐに別れての繰り返し。

結婚しても大丈夫だと思える女性を見つけられず、それどころか会いたいがために病院に押しかけてくるような女性もいたため冷たくあしらうと、院内には『傍若無人で冷徹な俺様』という不名誉な噂も流れる始末。

最近ではもう面倒くさくなっていて、ここ数年はそういった相手すらいない。

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