天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
多恵はあと数年で理事長を引退し、彗の父が後を継いで理事長へ就任する予定でいる。総合病院の院長は父の弟である叔父に引き継ぐ気らしい。
まだ当分先の話だが、彗はいずれ院長だけでなく理事長も引き受ける気でいるし、話し合ったことはないが、きっと祖母や父もそのつもりだろうと思う。その布石として次の総会で彗を理事に選任しようとしているのだ。
祖母の勧める羽海と結婚し、家庭を持ったことで信頼を得て、長男である隼人よりも自分が後継者に相応しいと、身内だけでなく理事会にも早々に認めさせたい。
でなければ隼人が余計な横槍を入れてきたり、無駄に経営陣に派閥ができて財団の運営にとってマイナスになりかねない。
そもそも法人の理事会には役員の三分の一規定と呼ばれる決まりがあり、三親等以内の親族が理事の総数の三分の一を超えてはいけないのだ。
それは近しい者同士での不正がなされないようにという措置で、御剣の名前を冠した財団や病院を運営しているが、理事や監査、そして現場責任者には親族以外の人間の方が圧倒的に多い。
だからこそ、ただ御剣本家の長男というだけで名を連ねさせるわけにはいかないし、彗自身も実力と信頼をもって理事として認められたい。
今祖母を支えている理事会の主だったメンバーは、祖父の代から世話になっている重鎮が多くいる。彼らの年代の人間から信頼を得るには、やはり実績とは別に妻帯者であることが必要だと思う。