天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

病院に出勤すると、まず更衣室で作業着に着替えるところから一日が始まる。

七月も二十日を過ぎると夏本番といった暑さになってきて、通勤だけでも額にじわりと汗が滲んだ。

ひとりで羽海を育ててくれた貴美子に少しでも楽をさせたくて、高校を卒業後すぐに就職し、今年で社会人六年目。

背中と左胸のポケットの上に社名の入った淡いピンクと白を基調としたジップアップの半袖ジャンパーに、同じ配色のパンツを履き、背中まであるストレートの髪を後ろでひとつに結んでから服よりも少し彩度の高いピンク色のキャップをかぶる。

同じ時間に出勤した同僚と一緒に地下二階にあるハウスキーピング室へ向かい、清掃に使う道具をワゴンに積み込むと、簡単な朝礼が行われる。

以前はオフィスビルを担当していたため、基本的に月曜から金曜まで同じメンバーで作業をしていたが、病院に休みはないため出勤はシフト制で、勤務日と共にその日の担当場所が割り振られた一覧表を月初めにリーダーから貰うシステムになっている。

院内は清浄度によって区分分けされており、高度清潔区域というバイオクリーン手術室や移植病棟などは、厚労省が定めている病院清掃受託責任者の資格を持っているベテランが行う。

準清潔区域とされるICU、分娩室、手術前に医師たちが手を洗うコーナーなどは、比較的若手も任せてもらえるが、羽海は一般区域の病棟を担当するのが好きだった。

患者とコミュニケーションを取りながら、その人のために清掃する。

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