②Sparkl



僅かに目を見開いた後、応えるように返してきたのは、


『こちらこそ』


という、律儀な口パク。


桃だったら返しはファンサのみ一択。


サビに来て気が緩んだか?ボロが出たな。


なんて、思っていると。


2回目。力強い黒に射抜かれて。


瞬間、パチッと。


片方のまぶたが閉じられ、口の端がほんのり上がった。


桃がライブ中によくやる、惑わすような小さな笑みとウインク。


客たちはあっけなく落ちても、俺には効かない……はずだったのに。


「……っ!」


なぜか、今回に限って心臓がうるさい。


首元から顔まで暑くなってくる。


「あれ、昴。どうしたの〜?」


廉が不思議そうに俺の顔を見つめてきた。


どうしたのかって、そんなの俺の方が知りたい。



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