狼の目に涙
この状況を見られていたら、私は明日からきっと学校に居場所をなくす。
元々存在を消しているから、居場所なんて言葉が合っているかは分からないけど、私みたいな極めた帰宅部がいなかったおかげで、その危機には当たらないらしい。

フラフラしながら三十分かけて家に着き、玄関先で佐々原雅を降ろすというより落とすと、這いつくばって〝寝室…〟と呻き出した。

『寝室!?図々しい…あ、ごめんなさい。運びます』
「いらねぇ…自分で行けるから」

手伝おうとする私を跳ね除けながら、これまた図々しいお願いをされた。

アイスノン、冷えピタ、解熱剤、水、ゼリー。
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