またキミに会うために~1400年の時を超えて~
「父上も、中大兄皇子に殺されたのと同じ」

 ハッと息を呑む私に、皇子は切なさそうに微笑む。

「この難波宮は、父上が即位した時に造り上げた都だ。しかし中大兄皇子は、飛鳥宮に(うつ)れと言い出してな。反対した父上と父上についた者達を置いて、家臣の殆どを率いり去っていってしまったのだ。間人大后(はしひとのおおきさき)まで連れてだ。大后は父上ではなく兄君である中大兄皇子を選んだ。消沈した父上は様態を悪くし、崩御したのだ」

 私の知らない皇子の過去は、想像することのできない悲しみと苦しみにあったことを知る。

 大王の奥さんである后までも、去ってしまったなんて。一夫多妻制だとはいえ、大王が大きなショックを受けてもおかしくない。

 例え中大兄皇子からしたら妹だとは言え、人の奥さんまで連れていってしまうなんて……。と、そこで違和感を覚える。

 中大兄皇子と孝徳大王の后は兄妹。そのお母さんと、孝徳大王も姉弟。

 え!それって自分の姪を、后にしたってこと!?
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